《MUMEI》
4
プールと銭湯のシーンはなしにしたが、本番の舞台で口論のシーンに取り入れた。人一倍恥ずかしがり屋の紗季に、美術部の今泉部長がアドバイスをする。

「よし、紗季。シャイを克服する実戦訓練を行うんだ」

「実戦訓練?」

「まずは銭湯へ行こう」

「ウチにバスルームあるからいいですよ」

「そうではない。今も番台から男湯女湯両方が見えてしまう古い銭湯を知っている」

「それがどうしたんですか?」

「番台はだいたい男なんだ」

「行きませんよ」

紗季が背を向けて去ろうとするが、今泉は追いかけて言う。

「だから訓練だ。わざとバスタオルを巻かずに生まれたままの姿で番台のところへ行き、牛乳くださいと」

「絶対にヤです!」

ほかの美術部員である麻未も反論する。

「そういうことを強要するのはセクハラですよ」

「セクハラではない」

「セクハラです」

「私の辞書にセクハラの文字はない。カンラカンラ」胸を反らせる今泉。

「最低」

「そうだ」今泉部長は閃いたらしい。「じゃあ、プール作戦だ。みんなでプールに行こう。水着姿が恥ずかしい子が、全裸になどなれるわけがない」

「部長が紗季の水着姿を見たいだけでしょ」

「おおおおお!」

まさかここでやるか。翠は顔をしかめた。

今泉は思いきり走っていって「白鳥の湖!」で止まった。会場は大爆笑。今泉は翠を探すと、「受けたやないか」

「知らないわよ」

「アドリブが決まったくらいでドヤ顔はやめなさい」未来が言う。

連続受け。今泉は調子に乗った。

「ではプールに行こう」

「行きません!」

「じゃあ海は?」

「一人で行ってください」

「一人で行ってもしょうがないで生姜焼き・・・」

時間が止まった。未来が睨む。

「責任取りなさい」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫