《MUMEI》
9
紗季は暴れた。バスタオルを取ろうとした男を両脚で蹴る。

「テメー、何しやがるんだ?」

手足を縛られていると、立ち上がることもできない。紗季はコロコロ転がってベッドから落ちた。全身を床に打ってしまい、あまりの痛さに顔をしかめる。

多勢に無勢。すぐに抱え上げられ、ベッドに戻された。

「てごずらせるな」

「んんん!」

両目から涙を流し、激しく抵抗する紗季に、一人がナイフを出した。紗季はピタッと動きを止めると、目を見開いてナイフを見た。

「おとなしくしてるか?」

「・・・・・・」

「どうなんだ?」

「ん」頷くしかなかった。

紗季は観念したように力を抜く。男がバスタオルに手をかける。彼女は無念の表情を浮かべると、両目を閉じ、じっとしていた。

その時、入口でパイプイスが倒れる音がした。

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