《MUMEI》
16
「で、結末はどうなるんですか?」

「翠、そう先を急いではいけないよ。寝室で無念にも純情可憐な花びらを散らしてしまうのか、それとも、助かるのか。ここでねえ、ヒーローが助けに来るなんてねえ、ありきたりな展開は嫌なんだよね」

「じゃあ、妃は敵に屈するの?」麻未がわがことだから心配だ。「ヤですよそんなの」

「妃は考える。相手は狼やハイエナ、あるいはゾンビではないのだ。邪悪な悪党の心の中にも、僅かでも菩薩の心はあるはずだ。人間である以上、言葉が通じるはずだ」

まともなストーリーになってきたので、皆は無言で話を聞いた。

「待ってください。きょうはちょっと待ってもらえますか。こう、必死に哀願して初夜を何日も遅らせる妃。業を煮やすが、悪党は我慢した。舌でも噛まれたら取り返しがつかない。それに、夜の営み以外は、共に語り、共に食事をし、夫婦のような感じになっている」

竜也が焦った顔で聞いた。

「まさか、そのまま良心が目覚めて、悪党が妃を許し、城から解放してしまうなんてことは?」

「まさかってことないっしょ」未来が口を挟む。

「まだまだ甘いな」今泉が危ない笑顔。「青いと言ってもいい。君をきょうから青太郎と呼ぼう」

「時間は無限じゃないですよ」翠の目が怖い。

「わかった。結論を先に言うと、クックック! 妃は粘りに粘り、頑張って、観客もこのままきっと妃は清らかな乙女のまま解放されるのだろうと思いきや! キングイヤウケア!」

「誰も知らない」未来が白けて言う。

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