《MUMEI》
部屋。
扉を開けたそこには、闇以外になにもなかった。
壁、床、天井と呼べるものは視認することはできず、僕がたった今開けた扉しか存在していない。

その部屋とは呼べないその空間の中間に、人がぽつんと体育座りしていた。

こちらからは背を向けていたが、後ろ姿からでも新斗だろうと判断できた。
小鳥遊晶の話では、新斗に似たのがたくさんいるらしいから、本物ではない可能性がある。
一応埜嶋さんに確認するために振り返ってみると、さっさと行けと目で言っていた。承知しました。
空間に片足だけ出すと、地面を踏むような感覚が足の裏に走った。
おっかなびっくりで一歩ずつ進んでいき、ゴクリと喉を鳴らし、新斗の肩を軽く叩こうとしたその瞬間―――――


「アァカシック・バスターーーーーーッッ!!!」
「うわあああ!」


新斗は叫びながら立ち上がった。
「ん!?何者だ貴様らは!?」
キレ良くババッ!と振り返る新斗。
とてもとても可笑しい。
「ッ!?貴様………見覚えがあるな」
新斗はなにかを感じ取ったようだ。
「さては貴様、ガイアセイバーズの手先か!?」
「もういいお前が偽者なのはよくわかった!」
イラっとし、つい《俺人格》に入れ替わり、踵を返し、扉に戻ろうとすると新斗は、
「逃がすものか悪の手先め!ライジングメテオーーー!!」
と言いながら、明らかに名前負けしているへなちょこ跳び蹴りを繰り出した。
ぺしっと払い除けると、新斗は尻から落下した。
「…………ちょっとくらいノってくれてもいいじゃないか」
「お前本当に佐久間新斗なのか!?」
「ん?なんだ藪からスティックに。ボクは正真正銘佐久間新斗だぞ。またの名を!ビルトビルガー!!」
「確かにパイロットの名前は似てるけどさ。パクりはダメでしょー」


そんな茶番を二度三度繰り返したところで、スパロボオタク系新斗の部屋から出た。

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