《MUMEI》
2
「あっ・・・・・・」

若い男は、ふみのバスタオル一枚の姿を見て硬直している。

「あ、二喜麻ふみさんですか?」

「はい」ふみは満面笑顔で言った。「ごめんなさいね、こんなカッコで」

「いえいえ」

ふみは堂々としているのに、若い男のほうが赤面してしまっている。ネットで注文した本が届いたのだ。

「1500円になります」

「ちょっと待っててくださいね」

ふみは背を向けて奥へ行く。若い男は彼女の後ろ姿を凝視した。とびきりの美少女のバスタオル一枚の姿を見れて、ラッキーとしか言いようがない。

ふみは財布を持って戻ってきた。

「1500円、ちょうどです」

「ありがとうございます」

若い男はすぐに出て行った。紳士だ。物足りない。

「ふう」

ふみは溜息をつくと、鍵を締めてU字ロックをした。最初は胸のドキドキが凄かったが、慣れてくると、バスタオル一枚で出ても、あまり感動はない。慣れというのは恐ろしいもので、もっと危険なスリルを味わいたくなる。

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