《MUMEI》 4目のやり場に困る。いや、これは挑発だろう。これを挑発と呼ばずして、何を挑発と呼ぶのか。挑発ならば、見てあげるのが礼儀というものではないか。 「1200円になります」声が上ずっている。 「はい」 「2000円お預かりします。800円のお返しです」 ふみは小銭を財布の中に入れようとした、その瞬間、タオルがストンと落ちてしまった。 「きゃっ」 慌ててしゃがみ込む全裸のエンジェル。彼は、そのまま玄関に押し倒して犯したい衝動にかられたが、何とか理性を総動員して耐えた。 「大丈夫ですか?」 「見た?」 「見てない見てない」 「見たでしょ?」真っ赤な顔のふみが下から見つめる。 「本当に見てないから、大丈夫」 「恥ずかしい」 ふみはタオルで前を隠しながら立ち上がると、とんでもない要求を好青年にした。 「すいません、タオルを、押さえていてくれませんか?」 「はい?」 これは杉下右京警部でなくても聞き返すだろう。彼は耳を疑った。タオルを押さえてって、いたいけな美少女が、そんなことを男に頼むだろうか。 「お願いします、また落ちたらヤだから」 「あ、いいんですか?」 (いいわけがない。手が胸に触れて、この人痴漢ですという新手の詐欺ではなかろうか) 彼はいろいろな可能性が頭をよぎった。 (わいせつ行為として告訴されたくなかったら、10万円振り込めみたいな・・・) 「どうしましたか?」 裸で小首をかしげる仕草がたまらなくかわいい。彼は理性が飛んだ。 「タオルを押さえていればいいんですね?」 「お願いします」 彼は、両手でタオルを押さえ、彼女の胸と股を隠してあげた。ふみは財布に800円をしまうと、自分でタオルを押さえた。 「ありがとうございます」 「いえいえ」 「じゃあ、またね」ふみはキュートなスマイルを向ける。 「毎度ありがとうございます。またよろしくお願いします」 「はい」 男はドアを閉めた。廊下でガッツポーズ。正直興奮していた。凄くかわいい女の子のきわどい格好を見られて幸運を感じた。一方、ふみのほうは、今までにないハラハラドキドキを体感できて、満足だった。 「あああ・・・ドキドキしたあ」 やはり「ストン」は恥ずかしい。スリル満点だった。相手の男性にタオルを押さえてもらうというのは、ふみのオリジナルだ。しかし危険も大きい。 「同じ相手に二度はできないね」 ふみは笑った。毎回そんなことをしたら単なる変態娘だと誤解されてしまう。いや、誤解ではなく、バレてしまう。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |