《MUMEI》
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目のやり場に困る。いや、これは挑発だろう。これを挑発と呼ばずして、何を挑発と呼ぶのか。挑発ならば、見てあげるのが礼儀というものではないか。

「1200円になります」声が上ずっている。

「はい」

「2000円お預かりします。800円のお返しです」

ふみは小銭を財布の中に入れようとした、その瞬間、タオルがストンと落ちてしまった。

「きゃっ」

慌ててしゃがみ込む全裸のエンジェル。彼は、そのまま玄関に押し倒して犯したい衝動にかられたが、何とか理性を総動員して耐えた。

「大丈夫ですか?」

「見た?」

「見てない見てない」

「見たでしょ?」真っ赤な顔のふみが下から見つめる。

「本当に見てないから、大丈夫」

「恥ずかしい」

ふみはタオルで前を隠しながら立ち上がると、とんでもない要求を好青年にした。

「すいません、タオルを、押さえていてくれませんか?」

「はい?」

これは杉下右京警部でなくても聞き返すだろう。彼は耳を疑った。タオルを押さえてって、いたいけな美少女が、そんなことを男に頼むだろうか。

「お願いします、また落ちたらヤだから」

「あ、いいんですか?」

(いいわけがない。手が胸に触れて、この人痴漢ですという新手の詐欺ではなかろうか)

彼はいろいろな可能性が頭をよぎった。

(わいせつ行為として告訴されたくなかったら、10万円振り込めみたいな・・・)

「どうしましたか?」

裸で小首をかしげる仕草がたまらなくかわいい。彼は理性が飛んだ。

「タオルを押さえていればいいんですね?」

「お願いします」

彼は、両手でタオルを押さえ、彼女の胸と股を隠してあげた。ふみは財布に800円をしまうと、自分でタオルを押さえた。

「ありがとうございます」

「いえいえ」

「じゃあ、またね」ふみはキュートなスマイルを向ける。

「毎度ありがとうございます。またよろしくお願いします」

「はい」

男はドアを閉めた。廊下でガッツポーズ。正直興奮していた。凄くかわいい女の子のきわどい格好を見られて幸運を感じた。一方、ふみのほうは、今までにないハラハラドキドキを体感できて、満足だった。

「あああ・・・ドキドキしたあ」

やはり「ストン」は恥ずかしい。スリル満点だった。相手の男性にタオルを押さえてもらうというのは、ふみのオリジナルだ。しかし危険も大きい。

「同じ相手に二度はできないね」

ふみは笑った。毎回そんなことをしたら単なる変態娘だと誤解されてしまう。いや、誤解ではなく、バレてしまう。

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