《MUMEI》 7「じゃあ俺たちと飲みに行く?」 「あたし、お酒は飲めません」 「ダメ、飲ますよ」 「19歳なんで」 「うるさいよ」 男たちは全裸のふみに迫る。 「言うこと聞かないとねえ、このパジャマで手足縛ったまま放置するよ」 そんなことされたら絶対に困る。ふみは泣いてしまった。 「許して!」 「泣いたってダメだぞ」 そこへ、パトカーが二台来て止まった。 「ヤベ!」 コンビニの店員が警察に通報してくれたのだろうか。男たちが一斉に逃げると、パトカーから警官が飛び出してきて怒鳴った。 「待てこらあ!」 女性警察官が裸のふみを見ると、「毛布出して」と後ろを振り向く。ふみは胸と股を隠し、じっとしていた。女性警察官が毛布でふみの裸を隠すと、聞いた。 「怪我はない?」 「大丈夫です」 しっかりした受け答えだ。女性警察官は、散乱しているパジャマを見た。 「これは、あなたの?」 「あ・・・はい」 パジャマを着ていたことがバレるが、仕方ない。取り返しのつかない羞恥プレイをされる前に助けられた。今はとにかく感謝しかない。 警察官はパジャマをバタバタはたくと、大して汚れたり、濡れていないことを確認し、ふみに言った。 「とりあえずこれ着ようか」 「はい」 さすが女性警察官。毛布で彼女の体を完全に隠し、着替えている様子が外から見えないようにした。ふみは急いでパジャマを着た。 「ありがとうございます」 「下着は盗られたの?」 「・・・・・・」 金ではなく、下着を強引に奪った場合も、強盗になるのだろうか。強盗の罪はかなり重いことを、ふみは思い出した。それに女を触りまくって全裸にしたとなると、強制わいせつも入る。いや、レイプ未遂になるだろう。 嘘の証言をして、もしも犯人グループが捕まった場合、下着なんか盗んでいないから、食い違ってしまう。逆恨みは怖い。 「あの・・・下着は最初からつけてませんでした」 「そう」 女性警察官はやさしい声で聞いた。 「酷いこと、されたの?」 「いえ、レイプはされてません」 「触られた?」 「はい。あちこち」 「・・・家まで送るわ」 パジャマ姿のふみは、パトカーに乗った。隣に女性警察官がすわる。パトカーは走り出した。ふみが道案内をする。マンションに到着すると、女性警察官が言った。 「また連絡します。連絡先を教えて」 「はい」 ふみは素直に名前と電話番号を教えた。まだ夢の中にいるような、ふわふわした感じだ。 「やっぱり部屋まで送ってく。その格好じゃ怖いでしょ」 「・・・・・・」ふみは赤面して俯いた。 エレベーターで3階へ。女性警察官はふみを部屋の前まで護衛した。幸い誰にも会わなかった。 「ふみさん、パジャマで、コンビニ行ってたの?」 「すいません、二度としません」 「そのほうがいいわね」 「すいません。気をつけます」 ふみは平謝りだ。 部屋に入り、鍵を締めて、しっかりU字ロックをすると、ベッドに腰を掛けた。心臓が止まるかと思うほどのハラハラドキドキを体感した。本当に怖かった。ふみは、野外は危険過ぎるのでやめようと心に固く誓った。 前へ |次へ |
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