《MUMEI》 8数日もすると、危険な体験も薄らいでしまう。欲望というものは恐ろしいもので、なかなか押さえきれない。月曜日に「二度と競馬をやらない」と固く誓った人が、金曜日の夕方には競馬新聞を買っている。二日酔いで頭痛に苦しみ、「二度と酒は飲まない」と誓願したサラリーマンが、週末には居酒屋にいたりする。 ふみは、危険な野外プレイはしないつもりでいたが、相変わらず家の中では素っ裸で過ごしていた。一糸まとわぬ姿で寝るのは健康にいいと聞くし、昼間から全裸というのは、開放感がたまらない。 窓を全開にし、カーテンも開けている。見たければ見なさいと言わんばかりだ。裸でエアコンは体に毒のような気もするので、外の風を全身に浴びていた。 全裸でベランダに出るのは公然わいせつになるのだろうか。それより近所の知っている人と目が合ってしまった場合、全裸だと恥ずかし過ぎるので、ベランダに出る時はバスタオルを巻いた。 もちろんバスタオル一枚でも冒険だが、ふみはもう慣れっこになってしまった。バスタオル一枚ではそんなにドキドキできない。 ふみは、ふとあるアイデアが浮かび、胸がドキドキした。 「ヤバイかな?」 思い立ったら実行したくなるのが「究極のM子」というものだ。冒険心旺盛な女子を「真性M」あるいは「神聖M」とも言われている。早速、ピザを注文する。 20分経過。そろそろか。ふみは全裸のまま玄関へ行くと、何を血迷ったか、U字ロックを外し、ドアの鍵も開ける。 「ふう」 一気に胸のドキドキが激しくなる。「やめなさい」という警告音のようにも思えるが、ふみは全裸のまま玄関に仰向けに寝た。もちろん両脚はドアのほうに向けた体勢だ。そして両手を頭の後ろに組む。より無防備な格好で、すぐには起き上がれない。 耳をすませると、かすかにエレベーターの音が聞こえる。さらに廊下を歩く靴音。ふみは心臓が口から飛び出るかと思うほどのドキドキ感を楽しんだ。 彼女の部屋の前で足音が止まる。ピンポーン! 「あん・・・」 チャイムの音が子宮を貫く。しかしふみは起き上がらない。そのままの体勢で二度目のチャイムの音を聞く。 「あああ・・・」 もしもドアを開けられたら終わり。このスリルは究極レベルだ。これほど緊張し、興奮したことはない。 ピンポーン! 「うわあ・・・イッちゃううう」 その時、ドアがバッと開けられてしまった。 「きゃあああ!」ふみは急いで横向きになる。 「あ、すいません」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |