《MUMEI》 9ドアが閉まった。ふみは真っ赤な顔でドアを睨むと、ゆっくり起き上がり、小さなタオルで前を隠すと、ドアを開けた。 「あ、ピザ、お待たせしました」若い男が緊張した顔で言った。 「ドア自分で開ける普通?」 「すいません、本当にすいません」 「恥ずかしいなあ。女一人暮らしなのに、着替えていたり、裸だったらどうするとか考えないの?」 男は平謝りだ。 「本当にすいませんでした。今後気をつけます」 「悪いけど店長に言うよ」 「それは待ってください」 「いきなりドア開けられて、裸を見られたって言うよ」 「見てません、見てません」 「見たでしょう」 「見てません、本当に何も見てません」 「見たからドア閉めたんでしょ。あたしが裸だからヤバイって」 男は悔しそうな顔で俯いた。ただ裸でいたならまだしも、裸で玄関に寝ていたというのは説明がつかない。ふみは胸のドキドキが止まらない。 「見たことを誰にも言わないと誓えますか?」 「もちろんです」 「家族にも親友にもよ。墓場まで持って行ける?」 「はい」 「嘘ばっかし」 「嘘じゃありません」 ふみは赤面すると、言った。 「ヨガをしていたのよ」 「あ、そうだったんですか」 「おいくら?」 「お代はいりません」 「お金は払うわよ」ふみは唇を尖らせた。 男は悪そうに言った。 「1800円です」 「ちょっと待ってて」 ふみは背を向けると、奥に行った。お尻が丸見えだ。男は慌てて俯いた。 (玄関で全裸でヨガ・・・?) ふみが財布を持って戻ってくる。 「あたしのお尻見てた?」 「もちろん下を向いていました」 「律儀なのね」 ふみは笑みを浮かべると、男に言う。 「悪いんですけど、タオル押さえててくれますか?」 「・・・・・・え?」 「お金出すから」 「あ、はい」 男は両手でタオルを押さえた。ふみは余裕で財布から1800円を出す。 「ありがとうございます。またよろしくお願いします」 「はい、どうも」 男は1800円をしまうと、ドアの鍵を締めた。 「え?」 ふみがポカンと口を開けたその時、男は彼女のタオルを奪い取り、投げ捨て、ふみを強引に押し倒した。 「きゃあああ!」 全裸のふみは玄関に押し倒される。男は彼女の両腕を押さえつけて上に乗り、思いきり胸や股を至近距離から見た。 「待って、落ち着いて」 「そんなに裸見せたいなら見てやるよ」 「違うの待って、違うんです」 立場が逆転したように、今度はふみのほうが低姿勢で、男が強気に出た。 「ヨガなんて嘘だろ。何してた。独りエッチしてたのか?」 このセリフから、この方面の知識はあるように思える。ふみは早口に言った。 「正直に本当のことを話したら許してくれますか?」 「許す許さないは俺が決める。言ってみな。玄関に裸で寝転がって何してた?」 ふみの顔が真っ赤だ。力では勝てない。彼女は観念して言った。 「ゲームを」 「ゲーム?」 「全裸で玄関に寝て、もしもドアを開けられたらアウトだから、凄くドキドキして・・・」 「・・・かわいいじゃん」 どうやら理解してしまったようだ。恥ずかしい。ノーマルな男性には、絶対に理解できないだろう。この男はアブノーマル。あるいはS・・・ということは、今非常に危険だということだ。 「お願い許して、偉そうな態度を取ったことは謝ります。ごめんなさい」 「もちろん許さないよ、犯すよ」 「待って、待って!」ふみは身じろぎした。 前へ |次へ |
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