《MUMEI》 7病院のベッドで寝ているふみ。耕史は彼女の手を握り、聞いた。 「怪我はしてない?」 「大丈夫よ。本当にありがとう。命の恩人です」 「ふみ」 ふみは笑みを浮かべると、囁くように言った。 「耕史さん。退院したら、あなたにあげる」 「何を?」 「ふふん」 ふみは思わせぶりに笑うと、耕史の目を真っすぐに見つめる。 「乙女の純情」 「え?」 「あれ、ホテルで言ったじゃん。あたしまだだって」 まだ。耕史は考え込んだ。ホテルでの会話を全部覚えているわけではない。 「信じてなかったの。あたし、そんなにアバズレに見える?」 「待った。アバズレと思ったことなんか一度もないよ」 ふみは業を煮やして、ストレートに言った。 「あたし、処女だよ」 「!」 こういう場合、耕史は、何て答えていいかわからなかった。 「初めては、愛する恋人に捧げようと、ずっと乙女の純情を守ってきたの。だから、あいつらに奪われてしまうと思うと、本当に悲しかった。でもあなたが助けてくれた。あなたには権利があるわ。あたしのこと、愛してくれてるみたいだし」 「みたいじゃない」耕史はふみの手を強く握り締めた。「本気で愛してるよ、ふみ」 「ありがとう。じゃあ、退院したら連絡するね」 「わかった」 耕史は不謹慎だと思いながらも、興奮していた。魅惑的なふみを抱ける。初めては痛がると聞く。ならば、愛撫でメロメロにしてから優しく抱こう。そんな妄想を抱いて、慌てて打ち消した。 「今は、早く良くなることが先だ」 「もう大丈夫よ。酷い目には遭ったけど、もう大丈夫」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |