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《MUMEI》 9ガスの定期点検の当日。午後からというだけで、ハッキリと1時なら1時と時間が決まっているわけではない。ただ待っているのも時間がもったいない。ふみは今年の夏に海やプールで身につける水着を買っていたので、試着しようと思った。 一度着た服を全部脱ぎ捨て、真っ裸になると、セクシーなピンクのビキニを身につけた。ふみは全身鏡に自分の水着姿を写す。エロティックでかわいらしい。 ピンクは少し刺激的過ぎるか。さぞかし目立つだろう。変な柄の悪い男にナンパされるのは怖い。スリリングだが危険も大きい。 ピンポーン。 「あっ・・・」 チャイム。ガスの点検が来てしまったか。ふみは水着姿のまま、とりあえず受話器を取った。 「はい」 『ガスの点検にまいりました』 「あっ・・・」ふみは魔が差した。「きょうでしたっけ。うっかり忘れていました」 『え、御都合悪いですか？』 「違うんです。点検のことすっかり忘れていて、今、水着の試着してて。水着姿のまま出てもいいですか？」 『・・・・・・』 点検員の谷藤は焦った。水着姿のまま玄関に出るというのか。とにかくすぐに返事しないといけない。 『あ、構いませんけど』 40歳ベテラン。この仕事をしてこんなことは初めてだ。声からしてまだ若そうだった。谷藤は期待に胸を膨らませ、変なところが膨らまないように気をつけて、ドアが開くのを待った。 ふみはスリッパも履かず裸足のまま玄関まで行くと、一度深呼吸。下着姿では明らかに不自然だし、パジャマ姿やバスタオル一枚ではもう慣れてしまってドキドキできない。 もちろんビキニ姿で玄関先に出るのは初めての試みだ。バスタオルはある意味、恥ずかしいところは全部隠してあるが、水着姿はおなかも見せてしまうし、裸に近い。海やプールへ行く時、下着と同じようなものだからと、ビキニは恥ずかしくて着れないという女性も少なくない。 ふみはすました顔でドアを開けた。谷藤は赤面した。とびきりにかわいい女の子ではないか。まさか高校生か。かなり若い。二十歳前後だろう。彼は、ふみのセクシーでかわいらしいピンクのビキニを凝視し、エキサイトしてしまった。 「ごめんなさいね、こんなカッコで」 「いえいえ、大丈夫ですよ」 豊かな胸。色っぽい美ボディ。見事な美脚。これはたまらない。谷藤の理性は揺らいだ。このまま玄関先に押し倒してビキニの紐を引っ張りたい衝動にかられたが、何とか耐えた。 「あの、最初に外の点検をしますんで、また呼びますから、中でお待ちください」 「あ、はい」 一旦ドアを閉めた。ふみは困った。普通に考えて、ここで私服に着替えるだろう。せめて水着の上からでも部屋着を着るはずだ。女の子なのだ。せっかく着替える時間があるのに、また平気で水着のまま出たら、変に思われるか。 そんなことを考えていると、チャイムが鳴った。律儀だ。水着姿だから、いきなりドアを開けるのは遠慮したか。今度は全裸だったら困ると思ったか。 ふみは水着姿のままドアを開けた。谷藤は案の定、驚いた顔をした。 （うにょ、まだ水着のままだ） 「あの、お湯を出しっ放しにしてもらえますか？」 「お湯？」 「はい。こっちで出したり止めたりしますから」 「あ・・・」 ふみはお湯を出した。ドアが閉まる。またすぐにドアが開いた。 「あの、お湯を出しっ放しにしてもらえますか？」 「出しっ放しにしていますよ」 「もっと蛇口を捻ってください。でないとお湯にならないので」 「あ、はい」 前へ |次へ |
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