《MUMEI》 理解不足。「行けるの?埜嶋さん」 心配そうに私の顔を窺う神名くん。 「大丈夫。行ける」 立ち上がり、目に付いた扉を開けた。 「それ行けコーカサスオオカブト!自慢の角を見せてやれ!お前も負けるなシムソンメンガタカブト!」 バタン。 「次!!」 「カレーはデザートだ」 バタン。 「次!!」 「哀れな我に祝福を与えたまえええええ!!!」 バタン。 「次!!」 本当に、本当に様々な新斗くんがいた。 というか変化が極端すぎない? そのおかげで本物かどうか判断しやすいわけだけど。 しかし考えてみたら、それだけ新斗くんは変化を求めていたということになるのかも。 真面目で、少し無口で、堅苦しい自分を変えたかったのかも、しれない。 新斗くんをずっと見てきたつもりだったけど、本当につもりだっただけで、何もわかってあげられていなかった。 ………いや、クヨクヨするのは後。今は新斗くんを見つけ出そう。 前へ |次へ |
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