《MUMEI》
7
「ゆり。俺と旦那と、どっちが上手だ?」

何てくだらない質問をするのだろう。ゆりは心底軽蔑したが、軽く瞬きすると、小声で答えた。

「千葉さんです」

「ガッハッハッハ!」千葉は大笑いした。「まあ、この場ではそう答えるしかないな」

千葉は、胸ポケットを叩きながら言った。

「自分の妻のスッポンポンを部下や上司や同僚に見られて、しかもアンアン乱れている悩ましい姿を見られてしまうんだ。おまえの旦那は会社にはとてもいられないだろうな」

ゆりは、決心した。

「千葉さん」

「何だ?」

「この体・・・好きにしていいですから、動画は返して」

ゆりの思いがけない言葉に、千葉は迷った。腕組みして考える。

「それは何、レイプじゃなく、同意のもとのセックスってことか?」

「・・・はい」

美しい瞳で睨まれて、千葉は胸が高鳴った。

「確かに、二人が離婚しても俺には何の得にもならねえからな」

「その代わり、絶対に動画を返してくださることが条件です」

「ハハハ。もしも犯した挙句、会社にバラまいたら鬼畜だな」

「その時は、あたしが生きていないと思ってください」

「待て待て、早まるな。命は粗末にするもんじゃねえぞ」

千葉は、散々迷い、美しいゆりを見たり、天上を見上げたりしていたが、DVDをゆりのおなかに乗せると、手足をほどいた。

「え?」

「惜しいな。犯したいけど、惚れた。おまえはいい子だ。じゃあな」

「え?」

ゆりが目を丸くして驚いていると、千葉はSMグッズだけ持って、動画はゆりに渡したまま、出ていった。

彼女はしばらく裸のまま呆然としていたが、寝室から出ると急いで玄関へ行き、鍵を締め、U字ロックをする。

「はあああ・・・」

力が抜けたゆりは、裸のまま尻餅をつき、肩を震わせて泣いた。怖かった。でも何とか助かった。酷い目には遭わされたが、最悪の事態は避けられた。

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