《MUMEI》
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とにかく、「絶対にイカされるわけにはいかない」という理由をつくることにより、興奮が増すし、いよいよ昇天寸前に追い込まれてしまった時のヒロインの慌てぶりは普通ではない。

「ふう」

ゆりは、夫の敵にメロメロにされてしまったヒロインと自分を重ね合わせてしまい、興奮してきた。彼女は今、旅館にいた。二泊三日の予定で宿泊し、温泉を満喫したあと、食事を済ませ、レモンサワーを飲み、ほろ酔い気分で仕事をしていた。

小さな旅館だ。都会のホテルと違い、山々に囲まれ、夜は旅館の周囲には人通りもほとんどない。別荘のような感じの旅館だと、ゆりは思った。

浴衣姿のゆりは、自然に手が自分の体に伸びる。しかしここで独りプレイも侘しいと思っていると、「マッサージ」という文字が目に入った。

「へえ、マッサージ呼べるんだ?」

ゆりは、いけないことを考えて胸がドキドキしてきた。マッサージ師が若い男だったら、挑発して楽しんでしまおうかと。

とりあえずフロントに電話をした。

『はい』男が出た。

「あの、マッサージを受けたいんですけど、今やってますか?」

『大丈夫ですよ』

「マッサージ師は男性ですか?」

『え、女性じゃないとダメですか』

「そんなことないですよ。男性でもいいですよ」

ゆりは胸が高鳴る。

『お部屋はどちらですか?』

「李の間です」

『では、今から行きます』

「お待ちしています」

電話を切った。ゆりは早速布団を敷いて準備をする。小さな旅館だ。すぐにマッサージ師が来た。若い男だった。しかも結構なハンサムボーイだ。

「よろしくお願いします」ゆりは白い歯を見せた。

「こちらこそ。あ、私、川平耕史と言います」

「あたしは、ゆりです」

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