《MUMEI》
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しかしこの男は言葉で支配する気なのか。女性にとって「素っ裸にする」は恐怖の言葉だ。ましてや拷問という非日常の言葉は、抽象的な分、何をされるかわからない怖さがある。

男性従業員が見ている目の前で全裸にされるのは死ぬほど恥ずかしい。ゆりは客だが、女性従業員にしてみれば、一緒に働いている、よく知っている同僚だ。見知らぬ男性に裸を見られるよりも精神的にきつい。

今度は、迷彩服の巨漢が、サバイバルナイフを皆に見せながら自己紹介した。

「俺の名前は代野通だ。身長186センチ、体重115キロ。男ども、英雄になろうとは思うなよ。俺はメチャクチャ強いぞ。三人束になってかかって来ても無駄だぜ」

屈強で獰猛そうな巨漢を前に、皆刃向かう気力も失せる。

「さて」また三井寺が笑顔で言った。「女の子たちにも自己紹介をしてもらおう。フルネームと身長と年齢を言いなさい」

レディに年齢を聞くのは失礼だが、人質にされたら逆らえない。体重を聞く意地悪をしないだけマシと思うしかない。ゆりがそんなことを思っていたら、突然差された。

「ゆりさん」

「え?」

「君からだ」

「あ、はい」

ゆりが立とうとすると、三井寺が制した。

「すわったままで結構」

乱暴な口調よりも、冷静で丁寧なほうが怖い。

「あたしの名前は、切吹ゆりです。え、あと、何でしたっけ?」

「身長は?」

「164センチです」

「年齢は?」

「年齢なんか、いいじゃないですか」ゆりは赤面して俯いた。

すると、三井寺は笑った。

「早速、素っ裸拷問第一号が出たね」

「待ってください!」ゆりは慌てて答えた。「32です」

「32歳か。30代は女性がいちばん輝く時期だね。40代になってもその可憐さを保てるかが勝負だが」

ゆりは俯いたままだ。

「10代20代には出せない大人の色香を感じるよ。男がみんな若い女の子が好きだと思ったら大間違いだよ」

(褒めてもセクハラですよ)

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