《MUMEI》 18唇を尖らせるゆりに、三井寺は聞いた。 「今、私の悪口を言ったね?」 「え?」 「どうやら図星のようだね」 「まさか、何も言ってませんよ」ゆりは焦った。 「絶対に言ったね。心の中で変態とか」 「言ってませんよ」ゆりは一生懸命弁解した。「信じてください。本当に何も言ってません」 三井寺は笑顔のままじっとゆりを見つめる。怖過ぎる。素っ裸にされて拷問される第一号なんて冗談ではない。 「信じてくれましたか。言ってませんよ、悪口なんて。さっき助けていただいて感謝しているんですから」 「ほう、君は感謝の心が強いようだね」 「さっきは、正直、ダメかと思ったから」 赤面するゆりが美しい。三井寺は嬉しそうな顔で言った。 「君はいい子だ。約束通りいい子には何もしないよ」 助かったか。ゆりは息を乱した。このやりとりは、ほかの女たちを緊張させた。言葉や態度には気をつけないと、それを口実にして全裸にされてしまう。 「では、君から自己紹介しなさい。名前と年齢と身長だ」 「はい。北、愛梨です。29歳。155センチです」 ゆりは、仕事柄一人ひとりを観察した。愛梨は長い髪を明るい色に染めた美形。 「次は?」 「光本由恵、28歳。162センチです」 「よしえさん」三井寺が復唱する。 由恵は短めな黒髪。やはり皆かわいい顔をしている。面接した支配人は面食いなのか。確かに女性従業員が皆若くてかわいいと、男性客は増えるかもしれない。 顔だけでなく、五人ともスリムで魅力的だ。 「あたしは、広内綾香、22歳。身長は、156センチです」 一気に若くなった。綾香は少女のようにかわいらしい顔をしている。肩に触れるか触れないかという短めな茶髪。純情そうだ。こんな子が全裸にされるのは絶対に避けなければならない。 「ゆりさん」 「え?」急に名前を呼ばれて、ゆりは焦った。 「さっきから、何か独白しているね?」 「あ・・・」 「何を独白していた?」 ゆりは正直に答えた。 「皆さん、魅力的なので。感心していただけです」 「ハハハ。君も負けずに美しいよ」 ゆりは赤面して俯いた。 (エスパーかよ) 前へ |次へ |
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