《MUMEI》
19
四人目が自己紹介した。

「山根海苛・・・」

「うみか?」三井寺が言った。「珍しい名前だね」

「あ、いえ・・・。年齢は二十歳で、身長は154センチです」

ゆりは懲りずに独白する。海苛はやや染めた短めの髪。少女の面影が残る。

「あたしは、永瀬すず、19歳。158センチです」

19歳。未成年がいたか。この子も守らなければいけない。作家として大人として、ゆりは、この場に居合わせた責任を感じた。

すずも短めの黒髪がよく似合っている。なかなかの美少女だ。

「19歳はもう立派な大人だからね。特別扱いはしないよ」

三井寺が、まるで釘を刺すように言った。未成年といえども、刃向かえば容赦はしないという脅しか。ゆりは緊張した。

今度は、代野が怖い顔で言った。

「さて、実験開始だ。サイコロゲームをしよう」

「その前に男性従業員の自己紹介が先だ」三井寺が言った。

「男の名前と身長なんて興味ありませんよ」

「ハハハ。まあ、急ぐな。ゆっくり行こう。夜は長いのだ」

女性従業員はかしこまった。サイコロゲームと聞いて、どうしても嫌らしいゲームを想像してしまう。ゆりも、エッチなゲームではないかと連想していた。

しかも夜は長いと言う。まさか深夜までゲームを続ける気なのか。

「では、支配人から」

「はい。私は、支配人の倉橋一仙です。33歳、175センチ」

高価そうなスーツを着た男性。若い支配人だ。ゆりは観察を続けた。くらはし、いっせん。珍しい名前だ。整った甘いマスクをしている。

「ええ、マッサージ師の川平耕史です。38歳、179センチです」

川平は知っている。ちょっとSでエッチだが、もしもの時に頼るとしたら、この男かとゆりは考えた。

「料理長の古関竹宏です」

この小柄な年配の男を、ゆりは犯人グループの一人と勘違いしたが、料理長だったとは。暗い影を感じる表情が気になる。女性従業員を人質に取られ、責任を感じているのだろうか。

「ええ、50歳、164・・・」

古関は、身長を聞き取れないほどの小声で言った。三井寺は特に咎めない。やはり代野と同様、男はどうでもいいのか。

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