《MUMEI》
23
愛梨は、隣の部屋で全裸になり、エプロンをして気づいた。前から見れば、露出するのは脚だけだが、横からは胸が見えてしまうし、後ろから見たら、お尻が丸見えではないか。

「ヤダ」

これは恥ずかしい。耐えられない。かといって、下着の上にエプロンでは、絶対に何か言われてしまう。愛梨はもう一度浴衣を着ると、部屋に戻った。

ゆりもまだ浴衣姿でいた。三井寺と話している。

「お願いです。全裸だけは勘弁していただけませんか?」

「さすがに真っ裸は恥ずかしいか?」

「恥ずかしいです」

「でも君は、真っ裸でマッサージを受けていたね」

「え?」

ゆりは赤面した。そんなことここでバラさなくてもいいではないか。その時、マッサージと聞いて、綾香は川平耕史のことを睨んだ。

「何だよ綾香チャン?」

不服そうな川平に、三井寺が聞いた。

「どうした?」

「綾香チャンが軽蔑の眼で睨みつけるもんだから」

綾香は焦った。たちまち弱気丸出しの顔で三井寺を見る。

「綾香さん。それは良くない行為だね」

「違います。軽蔑の眼でなんか見てませんよ」

「見てた見てた」川平が言う。

ゆりは、川平の裏切りが信じられなかった。

「綾香さん」三井寺は笑顔を消した。「彼はマッサージ師だ。女性客を全裸にすることもある。その何がいけないのかな?」

「ですから、軽蔑の眼でなんか見てませんよ」

「私は旅館をジャックした主犯だ。本来ならば、私を軽蔑の眼で睨まなければいけないのに、同じ助け合わなければいけない同僚を睨むとは、嫌いだな、そういうの」

「ですから・・・」

「弁解無用」

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