《MUMEI》
24
綾香は下着姿だから恐怖も倍増だ。おなかに手を当てて泣きそうな顔になる。その時、助け舟のように、代野が愛梨に気づいた。

「あれ、おめえ、何でまだ浴衣姿なんだよ」

「あの、裸エプロンって、全裸の上に着るんですか?」

「当たり前だろ」

「でも、お尻が丸見えで・・・」

「それが裸エプロンだ」

愛梨は赤面して言葉が詰まったが、頑張った。

「お尻が見えちゃうのは、ちょっと死ぬほど恥ずかしいんですけど、下は穿いてもいいですか?」

「どうやら、ゆりと愛梨と綾香の三人はスッポンポンだな」

「待ってください!」綾香と愛梨が同時に言った。

「ぬーげ、ぬーげ」

無情にも代野が笑顔で手拍子する。ゆりと愛梨と綾香は困り果てた。

「ぬーげ、ぬーげ。あれ、自分で脱ぐよりも、人に荒々しく脱がされるほうが燃えるタイプか?」

そう言うと、代野が危ない笑顔で歩み寄る。愛梨と綾香は逃げた。しかし、あくまで部屋の中を走り回るだけで、部屋から出て行く勇気はない。

三井寺は、無言で立っているゆりを見ると、代野に言った。

「代野。待ちなさい」

「はい」

「愛梨さん。裸エプロンは恥ずかしいか?」

「恥ずかしいです」

「じゃあ、特別に、君はパジャマ姿でいい」

「え?」

裸エプロンからパジャマ姿。これは正直嬉しい。愛梨は思わず感謝の心が湧いてしまった。

「あ、ありがとうございます」

「さっき、ゆりさんを助けようとしたからね」

三井寺が穏やかな笑顔を向ける。愛梨も尊敬の眼差しで三井寺を見つめた。人間は弱いものだ。この男に決定権があると思うと、嫌われないようにしようという心が働く。

「代野」

「はい」

代野は、ピンクのパジャマを箱から出し、愛梨に渡した。彼女は隣の部屋でパジャマに着替えて戻ってきた。助かった。しかし、代野がしつこい。

「愛梨は、普段寝る時はどんな格好だ? 生まれたままの姿か」

「違います。パジャマを着て寝ます。あとは、Tシャツとか・・・」

「パジャマを着て寝る時、ブラジャーはしないだろう?」

愛梨は一瞬黙ったが、すぐに答えた。

「ほかの人は知らないけど、あたしはブラはします」

「嘘をついたな」危ない笑顔。

「嘘なんかついてません」

「普通、寝る時はブラジャーを外すだろう」

「ですから、人はそうかもしれませんけど、あたしはします」

「そんなに一糸まとわぬ姿にされたいか?」

全裸にされたら絶対に困る。愛梨が折れた。

「わかりました、ブラは取ります」

「よし、それでいい」

愛梨は隣の部屋へ行き、ブラジャーを外してから戻ってきた。

「さて、綾香はスッポンポンだな」

「ヤです」

「ヤですだと?」代野が怖い顔で迫る。

「ヤなものはヤです!」

今にも号泣しそうな雰囲気を感じ取った三井寺は、笑顔で言った。

「代野。もういい。綾香さん。そのまま下着姿でいいよ。下着姿でも十分恥ずかしいんだから」

綾香は泣くのを堪えて、皆と一緒に並んだ。

「さて、ゆりは素っ裸だな」代野が言う。

「・・・・・・」

ゆりは、無言でいた。

「ゆりも荒々しく脱がされるほうが燃えるタイプか?」

本当に力で全裸にされたら悔しい。ゆりは、仕方なく言った。

「せめて、裸エプロンで勘弁していただけませんか?」

「甘い!」代野は笑った。

しかし、三井寺が真顔で聞く。

「やっぱり真っ裸はきついか?」

「きついです」

「よし、わかった。君はさっき、体を張って他人を助けた。ポイントは高い。ゆりさんは特別に、浴衣のままでいいよ」

「え?」ゆりは目を見開いた。

「誰も異論はないだろう」

ゆりは複雑な心境だったが、頭を下げた。

「ありがとうございます」

「お礼はおかしいだろう」三井寺は笑った。

「いえ、そんなこと」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫