《MUMEI》
2
「何のためのコスプレなんですか。全裸にしたらコスプレの意味がないじゃないですか」

ただ止めるのではなく、貴重な意見にも思えた。三井寺は笑顔でゆりを見た。

「なるほど、一理あるな」

「どうします、ボス?」

「よし、ゆりさんの意見を取り入れて、コスチュームのまま罰ゲームにしよう」

綾香はホッと胸を撫で下ろした。彼女はゆりのほうを見ると、軽く頭を下げた。

「じゃあ、綾香。サイコロを振ってもらうぞ」

「サイコロ?」

「自分で罰ゲームを選ぶんだ」

罰ゲームの内容がわからないのに、サイコロを振るのは怖い。いったいどんな罰ゲームなのか。綾香は顔をしかめると、サイコロを転がした。

2が出た。

「2番は、腹パンチ連打だ」

皆は焦った。エッチな罰ゲームと思ったら腹パンチ連打とは。綾香は泣きそうな顔でおなかに手を当てた。

「よし、そこに寝ろ」

「やめてください」

「俺が殴ったら死んじゃうから、三人のうち誰かだな」

三人とは、支配人と料理長と川平か。ゆりは卑劣だと感じた。仲間に罰ゲームをやらせるとは残酷過ぎる。

「綾香。三人のうちなら誰がいい?」

綾香は不安な顔色で三人を見た。ゆりを全裸にしてマッサージした川平は信用できない。彼女は、いちばん非力な料理長を見た。古関は俯いている。

「誰がいい?」三井寺が聞く。

「・・・料理長」

「え?」古関は驚いた表情で顔を上げた。

「では古関料理長。本気で腹パンチしなかったら、君が罰ゲームを受けることになるよ」

「・・・・・・」

ゆりは赤面して俯いた。口を挟みたいが、自分が腹パンチ連打されてしまうかもしれない。さすがに痛い目に遭うのは怖い。

「さあ、綾香、寝ろ」代野が命じる。

綾香は唇を噛むと、仰向けに寝た。

「両手はバンザイだ」

彼女は、言われた通りにした。下着姿で仰向けに寝て、バンザイしている無防備な綾香を見て、代野は自分が腹パンチ連打でいじめたい衝動にかられた。

古関料理長は、綾香の前にしゃがんだ。綾香はつぶらな瞳で古関を見つめた。

「綾香チャン。腹筋に力を入れて」

「はい」

古関がボカボカボカと腹パンチ連打。綾香は「げぼっ」と顔を歪め、両手でおなかを押さえたまま、両足をバタバタさせてのたうち回った。

綾香の演技か。それともまさか本気で殴ったのか。ゆりにもわからなかった。

「川平さん」三井寺が言う。

「はい」

川平は、すぐに綾香のおなかをさすった。綾香は抵抗せずに、されるがままになった。ここで拒絶でもしたら、また何を言われるかわからない。

「綾香チャン、大丈夫か?」川平は、おなかをさすりながら優しく聞く。

「はい、大丈夫です」

代野は笑顔で三井寺を見た。

「判定は?」

「多少は手加減しただろうが、かなり本気で殴ったと見える。二人とも合格だ」

(何が合格よ)

ゆりは心底怒っていた。こんな愚かなゲームをずっと続ける気か。実験とはいったい何なのか。

「さあ、第2問は、誰に答えてもらうかな」

誰も答えられない問題ばかりではないかと、彼女たちは察した。つまり罰ゲームは避けられない。

代野がサイコロを振る。また3が出た。綾香は目を丸くしたが、サイコロの振り直しだ。2が出た。

「2・・・は、由恵か」

白の水着を着ている由恵が前に出た。

「では、問題。ヒロイン・ヨーコがスライムに襲われ、スッポンポンにされてしまうアニメ作品のタイトルは?」

由恵は顔をしかめた。やはり全くわからない問題だ。

「え、スライム・・・スライム? ヨーコ?」

「ブー!」

「そんなあ」

代野は悪魔の笑顔で迫る。

「さあ、由恵。サイコロを振りな」

逆らえば全裸にされる。由恵は仕方なく従った。5が出た。

「5は何だ? キャメルクラッチだ」

「きゃめる?」

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