《MUMEI》
3
キャメルクラッチとは、プロレス技だ。ゆりは焦った。リョナ動画で必ず出てくる痛い技だ。

「よし、由恵。うつ伏せになれ」

「え?」

今度は代野が自らやるのか。由恵は怖々うつ伏せになった。代野は燃える。水着の紐を引っ張り、素っ裸にしたい衝動を何とか抑えると、代野は由恵のお尻に乗っかる。由恵は唇を噛む。これは緊張する。

「さあ、両手を貸しな」

言われた通りにするしかない。代野は由恵の両腕を自分の膝でしっかり固定すると、両手で由恵の顎を押さえ、そのまま後ろに反る!

「んんんんん!」

由恵が悲鳴を上げた。体が逆エビ反りになり、腰と背中に激痛が走る。

「んんん! んんん!」

「降参か?」

「んんん!」

「降参か?」

「んんん!」

「そうか、喋れないのか。じゃあ、もしも降参なら、女の子らしくかわいく両脚をバタバタさせろ」

由恵は必死に両脚をバタバタ、バタバタさせた。

「んんん! んんん! んんん!」

水着姿の美しきヒロインが、悪党にキャメルクラッチを決められてしまい、両脚をバタバタさせて降参の意思表示。Sの三井寺も興奮していた。リョナファンにはたまらないシーンだ。

「んんん! んんん!」

代野は技を解いた。由恵はうつ伏せのまま起き上がれない。彼女は肩を震わせて泣いていた。

「お、泣き入っちゃったか。女の子だな」

ゆりは、怒りに任せて動き、由恵の腰や背中を優しくさすった。

「大丈夫?」

「悔しい・・・」

「酷いことするよね」

「おやあ?」代野は喜ぶ。「ゆり、今何て言った?」

ゆりは覚悟を決めたように、代野を見た。睨む勇気はないが、謝る気もない。

「それくらいはいいだろう。ホントに酷いことなんだから、ハハハ」

また三井寺に救われてしまった。ゆりは複雑な気持ちだ。所詮は三井寺が主犯なのだ。しかし、意地を張ったために恥ずかしい目や痛い目に遭わされたら意味がない。ゆりは、由恵を抱き起こして、一緒に下がった。

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