《MUMEI》 落とされた! 1「じゃあ、ゆりは合格だから、罰ゲームはなしだ。で、次は6問目。これは自動的にすずだな」 ワイシャツ上だけ姿のすずが前に出た。見事な美脚だ。代野は感心した。 「では問題。将軍の娘が訓練中に男たちに輪姦されてしまう映画のタイトルは?」 「え?」 すずは考えた。しかし浮かばない。 「ブー!」 「嘘・・・」 「答えは何だゆり?」 「わかりません」 「嘘をついたら素っ裸にして拷問だぞ」 いくらのゆりでも、それは嫌だ。 「ごめんなさい、思い出しました」 「何だ?」 「将軍の娘」 「正解!」 代野はサイコロをすずに渡す。 「さあ、自分の運命は自分で選べ」 すずはムッとすると、サイコロを振った。2が出た。 「2は腹パンチ連打だあ!」 「ヤです」すずは腰が引けた。 「さっき、やったからもう一度振ってもらおう」三井寺が口を挟む。「違うのがいいだろう」 「助かったなすず」 助かったのかどうかはわからない。もっと酷い罰ゲームだったら意味がない。すずは緊張の面持ちでサイコロを振った。5が出た。5はキャメルクラッチだから、もう一度。 次は4が出た。代野が危ない笑顔だ。 「すず、残念、4は逆エビ固めだ」 「え?」 技の名前を言われてもピンと来ないでいるすずに、代野が襲いかかる。 「きゃあああ!」 彼女を押し倒すと、両脚を取って強引に反転。逆エビ固めが決まってしまった。逆エビ反りにされ、すずは叫んだ。 「ぎゃあああああ! やめて、痛い、イタタタタタタ・・・」 こんなことされたら腰と背骨が折れる。すずは泣き顔で畳を叩いた。 「やめて、やめて、やめて!」 「降参か?」 「降参、降参!」 技を解いた。ゆりと由恵と海苛が走り寄り、すずの背中や腰をさすった。 「大丈夫?」 「ダメ・・・」 「降参と言って許してあげるんだから、紳士だろ。ハハハ。本当の拷問というもんはなあ。泣きながらやめてと哀願しても許してくれないんだぞ」 ゆりがムッとしているのを見ると、代野が言った。 「なあ、ゆり」 「え?」ゆりは焦った。 「本当の拷問の恐ろしさは、ゆりにはわかるな」 返答に困る。 「たとえば魔法少女アイが受けた拷問なんて、こんなもんじゃないだろう、ハッハッハ!」 「魔法少女と普通の女子を一緒にしないでください」 「ガッハッハッハ! それもそうか」 三井寺文世が悠長に言った。「では古関料理長。みんなに美味しい食事を出してください」 「はい」 「食事ができるまでは休憩です。旅館の外に出てはいけませんが、旅館内なら、シャワーを浴びようと、温泉に入ろうと、もちろんトイレも自由です。でも、どさくに紛れて警察に通報したりはダメですよ」 皆緊張した。最後のは警告だ。口調は穏やかだが、ヘタなまねをしたら素っ裸にして拷問という脅しだ。 「料理長一人じゃ大変だから、誰かに手伝ってもらいましょう」 「サイコロで決めるか?」代野が笑った。「みんな自分の番号は覚えてるな。忘れたとか言ったらストマック・クローだぞ」 女性六人は神妙な顔で代野を見た。サイコロを振る。 「1は、愛梨か」 「はい」 ピンクのパジャマ姿の愛梨は、古関と一緒に部屋を出た。ほかの女たちは迷った。温泉に入る気分にはなれない。それに、自由にさせるのは何かの罠かもしれない。 「ゆりさん」 「はい」 「君は、部屋から携帯電話を持ってきなさい」 「はい」ゆりは緊張の面持ちで聞いた。「一人で行ってもいいんですか?」 「もちろん。君のことは信用してるから」 三井寺の笑顔が怖い。犯人はたった二人だが、皆に自由な行動を取らせるということは、警察に通報しない自信があるのか、それとも罠を張っているのか。 ゆりは自分の部屋へ行き、スマホを手にした。ヘタなことはしないほうが身のためだ。彼女は素直に宴会の部屋に戻り、三井寺にスマホを渡した。 「警察には通報したかな?」 「しません」 「ハハハ。絶好のチャンスを逃したね」 三井寺は板の間にスマホを置いた。皆の携帯電話が並んでいる。袋に入れたり、箱に入れたりすることなく、わざと手の届く場所に置いてあるのも罠かもしれない。 前へ |次へ |
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