《MUMEI》
9
下着姿だから余計に恐怖だ。代野が手を取ると、綾香は騒いだ。

「ヤです、ヤです、絶対ヤです!」

「そこまで一方的に嫌うなら、情けをかけることもねえな。来い」

力では勝てない。綾香が抵抗しても引きずられていく。

「きゃあああ・・・やめて、許して!」

ゆりは三井寺を見た。もう布団に入って寝ている。彼女は意を決して声をかけた。

「代野さん」

「ん?」代野は顔をしかめた。「またおめえか。今度は何だ?」

「あたし、立候補したいんですけど」

「はっ?」

代野と綾香だけでなく、ほかの女たちも、そして男三人も驚きの表情でゆりを見た。

「綾香の身代わりになるのか?」

「違います。代野さんとは、ちょっと、お話してみたかったし」

「ハハハ。お話だけじゃ済まないかもしれねえぜ」

ゆりは緊張の面持ちで言った。

「それはちょっぴり怖いですけど、いきなり押し倒すような野蛮人じゃないと信じてますから」

ゆりに、好奇心に満ちた眼差しで見つめられて、代野の理性が揺らいだ。

「あたしじゃ役不足ですか?」

「言うねえ。役不足のわけがなかろう」

代野は綾香の手を放すと、ゆりに言った。

「よし、ゆり、来な」

「はい」

綾香はゆりと目が合わせられず、俯いていた。

(すいません、ゆりさん。でも、あんな奴絶対ヤだから・・・)

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