《MUMEI》
10
ゆりは、代野に付いて行った。和室に入る。彼女はすました顔で布団を敷き、もう一つの布団も押し入れから出そうとした。

「何してる?」

「え?」

「布団は一つでいいんだ」

「あたしも寝ますし」

「とぼけるならキャメルクラッチだぞ」

リョナは困る。ゆりは出しかけた布団を押し入れにしまうと、お茶を用意しようとした。

「俺を舐めてるのか?」

「まさか」

代野は怖い顔で歩み寄ると、いきなりゆりを抱き上げた。

「きゃあああ!」

そのまま布団に仰向けに寝かせると、上に乗り、両腕を押さえつけた。この体勢はさすがに怖い。

「やめて、待って、待ってください」

「綾香の身代わりになるとはいい根性だな」

「あの子は純情だから、精神的にヤバイと思って」

「ゆりは平気なのか?」

「平気じゃないわ」

代野は浴衣の帯をほどく。ゆりは抵抗した。

「待ってください、怖い」

「怖いか?」

「怖いわ」

交わしきれないか。この男に犯されてしまうのか。大切な体を好きでもない男に奪われてしまうのか。

「ゆり、おまえはいい女だ。裸を見せろ」

「見たじゃないですか」

「ちゃんとは見なかった。川平の野郎に見せて俺には見せられないか?」

ゆりは、代野の腕をつかみながら浴衣を脱がされまいとした。

「川平があんな男と知ってたら、裸でマッサージなんてあり得なかった。後悔してます」

「川平は嫌いか。俺はどうだ?」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫