《MUMEI》
12
代野の息づかいが荒くなる。危ない。ゆりは胸のドキドキが止まらない。邪悪な舌が全身を這う。しかし乱暴であまり上手な愛撫とはいえない。ソフトタッチのほうが感じるのに。

「ゆり、ゆり」

貪るような愛撫だ。ゆりはすました顔で身じろぎしていた。代野の舌はおへそから下腹部へ。さらに内腿、そしてついにゆりのいちばん大切なところにキスの嵐。

「んんん」

クンニは彼氏や夫にだけ許される行為だ。好きでもない男に許してしまうのは悔しい。でも刃向かえばレイプされてしまう。

「ん・・・」

代野は興奮を抑えきれず、いきなり迷彩服を脱いだ。

「あ、待って」

「犯すぞゆり」

万事休すか。

「待ってください通さん」

「トオルさんだあ?」

名前を呼ばれて満足の笑みを浮かべると、代野は言った。

「名前なんか呼んだってダメだぜ」

「違うの、あたしの話を聞いて」

「時間稼ぎは無駄だぜ」

「そんなんじゃないわ」

ゆりは、無理に尊敬の眼差しで代野の目を見つめる。

「いきなり犯すのはなしよ。愛撫であたしをその気にさせて」

「言うねえ」

「あたしをイカせない男に、あたしを抱く資格はないわ」

代野はぞくぞくしてきた。初めて味わう種類の興奮だ。

「よーし、ということはゆり。俺にイカされてしまったら、犯されちゃうってことでいいのか?」

「・・・イカせたらね」

「何、俺にイカされない自信があるのか?」

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