《MUMEI》
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「用心棒?」

「見ての通り、うちの女性従業員は美人揃いです。私には彼女たちを守る責任がありますから。もちろんお客様もね」

三井寺は、半信半疑の表情の女性刑事に、笑顔で話を続けた。

「刑事さんならわかると思うけど、物騒な世の中です。殺人事件は毎日のように起きている。用心棒は必要でしょう。警察がいつでもどこでも庶民を助けてくれるとは限りませんから」

嫌味を言われた気がして、女性刑事は、彼女たちを見た。

「皆さん、人質に取られている、なんてことはありませんよね?」

いきなり人質と聞いてきた。ゆりは思った。何かタレコミでもあったのか。

「大丈夫です。絶対に守りますから。もしそうなら、名乗り出てください」

刑事は六人の女性を一人ひとり見る。このまま黙っているのも不自然だと思い、海苛が手を挙げた。皆に緊張が走る。しかし海苛は。

「あの、人質って何ですか?」

刑事は頭を下げた。

「わかりました。お騒がせしました」

「わかってくれればいいんです」三井寺が笑顔を向けた。「ご苦労様です」

「失礼しました」

刑事と二人の警官は、出口へ向かう。支配人が渋い顔で見送る。

「失礼しました」

刑事が出ていく。倉橋はホッとすると、部屋に戻った。三井寺は満面笑顔で言う。

「海苛さん」

「はい」海苛は緊張の面持ちで三井寺を見た。

「君は、どうして名乗りを挙げなかったの?」

「だって、しくじったら終わりだと思ったから」

「ハハハハハ!」三井寺は、思わず笑った。「正直だね。でもポイントは高いよ。あそこで誰かに本当のことを言われたら、防ぎようがなかったからね」

代野が危ない笑顔でサバイバルナイフを出す。

「いざとなりゃあ、俺が警官二人をぶっ飛ばして、あの生意気な美人刑事に鳩尾一発、スッポンポンにひん剥いて手足を縛り、あとは川平に任せるか、ハハハ」

川平も妄想して笑った。美人刑事を嬲るのは興奮する。

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