《MUMEI》
9
次は海苛の番だ。彼女は緊張の面持ちで唇を噛む。代野と川平はビールを飲みながらゲームを楽しんでいた。支配人の倉橋と料理長の古関は、部屋の端にすわって見ているだけだ。

「よし、二人とも時間稼ぎにより」

「振ります!」綾香が急いでサイコロを振った。4だ。次は海苛。6が出た。

「嘘・・・」

「嘘なもんか。これが厳しき現実だ」

時間稼ぎと判断されるのは怖い。綾香はブラジャーを取り、胸を隠した。そして片手でサイコロを振る。3だ。海苛は。2を出してしまった。

海苛は口を真一文字にすると、帯をほどき、浴衣を脱いだ。バスタオル一枚はやはり怖い。二人ともあと1回で全裸だ。

「さあ、運命はサイコロが握っているぞ」

綾香は6を出した。確かに引き運は強いかもしれない。海苛は絶望的な表情でサイコロを振る。4だ。海苛の負けだ。

「よーし、ぬーげ、ぬーげ」

ふてくされた顔の海苛は、バスタオルをバッと取ると、胸も下も隠さずにタオルを床に投げた。

「おっと、いい度胸してるじゃねえか。でもその反抗的な態度は何だ?」

「別に」

海苛も正座すると、胸を隠した。しかし代野がしつこい。

「今の海苛の態度は罰ゲームだな。川平。準備OKか?」

「いつでもスタンバイOKです」

「よーし」

「待ってください」ゆりが口を挟む。「ゲームの途中じゃないですか」

だが、代野は待ってましたとばかり満面笑顔だ。

「では、ゆりと海苛。二人とも川平の刑だあ!」

すると、海苛が強気な顔で言った。

「ゆりさんは関係ないでしょ。あたしだけにしてください」

代野と海苛がしばし睨み合う。

「ほう。海苛、いい根性してるじゃねえか。気に入った。一言謝ったら許してあげるが、謝らなかったら、ゆりが川平の刑だぞ、ハハハ」

卑怯な。それなら謝るしかない。海苛はムッとした顔のまま言った。

「ごめんなさい」

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