《MUMEI》
19
次は川平耕史だ。古関や倉橋と違い、反省の色を感じない。どこか軽い印象を受ける。沈んだ表情の古関や倉橋とは打って変わって明るい。

「あなたは、どうして共犯者になったんですか?」

「三井寺さんが旅館に来た時、マッサージをしたんです。男性客をマッサージしても面白くとも何ともないんで、気乗りしなかったんですけど、その時に今回の話を持ちかけられました」

「脅されたんですか?」

「いえ」

川平は黙った。しかし、殺人事件ではあるまいし、黙秘権を貫く自信もないので、べらべら喋り始めた。

「女の子にエッチな罰ゲームをするっていう計画を聞いて。つまり、人質にする女性従業員を、五人ともスッポ・・・全裸にするって。それ聞いて、ついつい胸が高鳴って」

亜季は、厳しい目で川平を睨んだが、彼は話を続けた。

「正直、五人とも凄くかわいくてタイプで。あの子たちの裸が見れるなんて夢のような話で。僕がどんなにマッサージしてあげるって言っても断るし、セクハラするから嫌だとか、すずや綾香や海苛は生意気言うし、由恵と愛梨に限ってはマジで嫌ってるし、内心むかついてて」

「・・・・・・」

「で、真っ裸にするだけじゃなく、手足縛って性感マッサージの刑というのを考えていて、そのマッサージを僕にやらせてくれるっていうから、これは断るのはもったいないと思って・・・」

バン!

「すいません」

亜季は怒った。

「悪いけど、あなた男としてもマッサージ師としても最低ですね」

「最低はよく言われます」

「じゃあ、全く反省の色がないのね?」

「待ってください。反省はもちろんしていますよ」

反省の色がないと罪が重くなることを思い出した川平は、真顔になった。

「刑事さん、僕はどれくらいの罪になりますかね。執行猶予付きますかね?」

亜季は蔑んだ目で見ていたことを思い出し、首を振って冷静になろうと思った。熱くなり、感情が入ってはいけない。

「あなたのしたことは、許されない犯行です。逮捕監禁、脅迫、強制わいせつ、強姦未遂」

「強姦なんかしてませんよ! 彼女たちの話を一方的に聞いたら、僕は死刑になっちゃいますよ」

「刑を決めるのは裁判です」

亜季はピシャリと冷たく切った。

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