《MUMEI》
20
次は、代野通だ。主犯格の取調べだ。今までと違って亜季も気合が入る。

「あなたは今回、三井寺文世の命令で動いたんですか、それとも自分の意思ですか?」

「自分の意思だ」

「三井寺との関係は?」

「三井寺さんは俺のボスだ。自発的に用心棒をやっている」

亜季は本題に入った。

「被害者の女性の証言と、照合する必要があります。警察は両方の意見を聞き、食い違っている場合は、どちらの証言が真実に近いのか、真剣に考えます。一方的に加害者を疑うことはしません」

「それは助かるね」代野は不敵な笑みを浮かべた。

亜季は深呼吸すると、記録を読み上げた。

「綾香さんを下着姿にして、古関料理長におなかを殴らせましたか?」

「古関料理長は案外ノリノリだったぜ。性格からして、勘弁してくださいとでも言うのかと思ったら、いきなり腹パンチ連打で、綾香が腹押さえてのたうち回るから焦ったぜ、ハハハ」

反省の色はゼロだ。亜季は冷静沈着にならねばと自分に言い聞かせた。

「由恵さんを水着姿にして、プロレス技で痛めつけましたか?」

「ああ、あれはキャメルクラッチだ。今、刑事さんで実演してやる。そこにうつ伏せに寝な」

「結構です」

「大丈夫だ。やめてと女の子らしくかわいく哀願したらすぐに外してあげるから」

「テメーいい加減にしろコノヤロー!」

男の刑事が怒鳴ると、亜季が止めた。

「待ってください。挑発に乗ってはダメです。わざとこういうこと言ってるんですよ」

亜季は話を続けた。

「海苛さんをバスタオル一枚の格好にして、手足を縛り、川平に卑猥な行為をさせましたか?」

「電マで攻撃したんだ。もう少しでイクところだったのに、ゆりが助けてしまったんだ」

「代野さん。二十歳の女の子が、みんなが見ている前で昇天させられたら、二度と立ち直れませんよ」

「海苛はタフだから大丈夫だ。それに六人ともMだから、本音はそういう絶体絶命のシチュエーションは好きなはずだ」

亜季は、呆れるしかなかった。

「パジャマ姿の愛梨さんを仰向けに寝かせて、パジャマをめくっておなかに直にプロレス技を仕掛けましたか?」

「あれはストマック・クローだ。刑事さん。いいから寝てみな。実演してその痛みを分かち合おうぜ」

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