《MUMEI》
21
男の刑事が怖い顔で睨む。亜季は代野を無視して次の質問に移った。

「すずさんに、ワイシャツ上だけの格好をさせて・・・」

「男のロマン・ワイシャツ上だけだ。女の間で彼シャツというイキな名称で呼ばれていることを最近知った。てことはだ。女のロマンでもあるんじゃねえのか」

亜季は口を真一文字にして、代野を見すえた。

「ほとんどの証言を認めるのね?」

「すずには何したっけな?」

「覚えていないんですか?」

「ビール飲んで酔っ払っていたからな。よく覚えてねんだ」

「逆エビ固めで彼女を痛めつけたんですよ」

代野は思い出して笑った。

「刑事さん。キャメルクラッチにしろ、ストマック・クローにしろ、逆エビ固めにしろ、2秒と耐えられない技なんだ。その激痛に女たちは慌てふためくんだ。力では勝てないから必死に哀願する。美しきヒロインが敵に哀願するのは悔しいだろ。プライドを捨てて両脚をバタバタさせたり、やめてやめてって叫んだり、ヒロイン敗北シーンは絵になるし、興奮するぜ」

根っからの悪党かもしれない。罪の軽減をまるで考えていない。亜季は不審にさえ思った。

「愛梨さんを全裸にして手足を縛り、くすぐりの刑で辱めましたか?」

「川平と一緒にやったな。くすぐりは便利な拷問だ。体を傷つけないからな。かといって息ができないから降参するしかない。でも刑事さん。本当に邪悪な犯人なら、泣きながら哀願しても面白がって意地悪するだろう。でも俺らは違うぜ。ちゃんと降参したら許してあげるんだから、紳士なほうだ、ガッハッハッハ!」

「貴様・・・」

今にも殴りかかりそうな男の刑事を手で制すると、亜季は聞いた。

「哀願したら即やめるというのは、三井寺文世の命令ですか?」

「まあ、そうだ」

「代野さんは、それには賛成なんですか?」

「おっと、誘導尋問は良くないぜお姉さん。本物の悪党なら、刑事さんも監禁していたかもよ。強気の誇り高き女刑事を哀願させるのは興奮するからな」

「そういう計画があったの?」

「ないないない。だから誘導尋問で俺の罪を重くしようと思っても無駄だ。やったことは認めてるじゃねえか。逃げも隠れもしねえ。でも妄想まで問い詰められたら死刑になっちまうからな、ガッハッハッハ!」

亜季は乗った。

「あたしを監禁したら、どうしてた?」

「ノーコメントだ。ズルイぞ刑事さん。そんな罠にはひっかからないぜ」

「・・・ゆりさんを部屋に連れ込み、レイプしましたか?」

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