《MUMEI》
23
亜季は最後の質問に移った。

「ゆりさんと海苛さんを、全裸のまま手足を縛り、川平に卑猥なことをさせましたか?」

「ああ。罰ゲームだ。愛梨と由恵と綾香とすずは、しおらしい態度を取り、弱気丸出しのかわいい顔で怯えていた。人質としての自覚があったからな。怖がって必死に哀願している女には、そんな酷いことはできないもんだ。俺は基本女には優しいからな」

「・・・・・・」亜季は怖い顔で代野を睨んでいる。

「でもゆりは最初から人質の自覚に乏しかった。度胸満点だ。あんな強気のヒロインはアニメだけかと思ったら、現実にもいたんだな。あの子は何者だ?」

「切吹ゆりさん。知らないの?」

「まさか刑事か?」

「作家よ」

ゆりは作家だったのか。代野通は思い当たる節があった。普通の女子がまず答えられないクイズを用意したが、あっさり全部答えてしまった。

「なるほど。で、そのゆりの勇敢さに感化されたのか、もともと気が強いのかもしれねえが、海苛が途中から反抗的な態度を取り始めた。これ以上勇気が伝染したら厄介だからな。二人は陵辱したぜ。なあ、刑事さん」

代野は得意満面で身を乗り出す。

「ゆりも海苛も、心底川平を軽蔑していた。その軽蔑している大嫌いな男に全身性感マッサージされちゃうって、死ぬほど悔しいだろ。でもSにとってそういうシチュエーションはたまらなく興奮するんだ。ましてやゆりなんか、イッちゃったからな。昇天した瞬間に屈辱の涙を流した時は美しいシーンだったな。まるで官能小説のようだったぜ、ガッハッハッハ!」

ゆりの屈辱が伝わってきて、亜季は拳を握り締めた。

「お、俺を殴るか。違法な取調べをするか、こんなに自分に不利になることを正直に喋っているのに」

挑発に乗ってはいけない。何か考えがあるのかもしれない。亜季はすました顔をすると、言った。

「海苛さんも、我々警察が突入しなければ、容赦なく辱めたんでしょうね。卑劣極まりないわ」

「生意気な態度を取ってた女が、弱気丸出しの泣き顔でかわいく哀願する姿はたまらん。マジに興奮したぞ」

亜季は深呼吸して乱れそうな息を整える。

「取り返しのつかない凶悪犯罪を犯したという自覚がないようね。まあいいわ」

「待てよ。殺人やレイプはしてないんだぞ。世の中には平気で女を犯してから殺しちゃう鬼畜がもっと大勢いるだろうよ」

亜季は、必死に心を落ち着けた。冷静沈着にならないと事件の全貌が見えなくなる。問題は、主犯の三井寺文世なのだ。今回の事件の犯行動機がまだ語られていない。家族に金を要求することもなく、警察に仲間の釈放を要求するわけでもない。

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