《MUMEI》
25
亜季の経験から、三井寺文世と代野通は、かなりの懲役刑になると判断した。逮捕監禁、脅迫、強制わいせつ、婦女暴行。しかし、人質になった六人の話をもう一度聞かないわけにはいかなくなった。

六人全員と話をする前に、亜季は個別に一人ひとりと会って、本音を聞くことにした。

「ゆりさん」

「はい」

「代野通は、レイプはしていないと言い張るんですが、どうですか?」

ゆりは顔を紅潮させ、唇を強く結んで俯いていたが、小声で話した。

「そうですね。あれをレイプと呼ぶには、無理があるかもしれません」

「え?」

前に聞いた時は、代野に犯されたと言ったが、ゆりは証言を自ら覆した。

「最初は綾香さんが部屋に連れて行かれるところだったんですけど、彼女は純情で、もしもレイプされたら精神的に危ないと思ったので、あたしが買って出ました」

身代わりになったのか。亜季はいたたまれない表情でゆりを見た。

「あたしなら交わしきれると思ったんですが、ダメでした。裸にされて、このままでは犯されちゃうと思ったんで、賭けをしました」

「賭け?」

「もしもあたしを愛撫でイカしたら、体を許すと」

何て無謀なことを。亜季は驚いた。

「イカされない自信があったんです。そしたら代野は、イカされそうになったら、抵抗するだろうと言うから、あたし・・・」

ゆりは躊躇したが、本当のことを話した。

「うつ伏せになって、両手首を腰のあたりでクロスして、じゃあ、どうぞ縛ってって」

「・・・嘘」

「で、両手首を縛られて、両脚まで縛られて無抵抗にされて、電マで責められて、不覚にもイカされてしまいました」

さすが官能小説家だと、亜季は半ば感心してしまった。ここまで冷静に再現できる被害者女性はいないだろうと思った。

「賭けに負けたんだからと、代野は全裸になってあたしを犯そうとしました。必死に哀願しましたが、許してくれません。だから最後の手段で、つけてとお願いしました」

「つけて・・・あっ、そういうこと」

「つけてと言ったら、もう同意のもとですよね」

「違うわ」亜季が即答する。「監禁されて逆らえない状態の場合、レイプは十分成立するわ。過去に判例もある。妊娠を避けるための非常手段だから。それでレイプではなくなるなんてことはありません」

「でも・・・」

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