《MUMEI》 30そして裁判。支配人の倉橋一仙と、料理長の古関竹宏は、懲役1年6ヶ月。執行猶予3年。 マッサージ師の川平耕史は、懲役3年の実刑判決。 主犯格の三井寺文世と、代野通は、懲役5年の実刑判決。 亜季は驚いた。まるで裁判官が行間を読んだような判決だ。あるいは、上層部が動いたのか。どんなウルトラCを使ったのか。 ゆりも、この判決には驚いていた。悪いことはできないものだ。天が裁判長の身に入って裁いたのか。 その後、もちろん旅館は閉鎖。皆失業したが、海苛も、愛梨も、由恵も、綾香も、すずも、それぞれ好条件で、旅館やホテルに就職できた。彼女たちが、せっかく覚えた経験と技術を活かせる職場で働くことができて、亜季も、ゆりも、ホッと胸を撫で下ろした。 そしてゆりは・・・。 今回の貴重な体験を小説にしようかどうか、迷っていた。かなりリアルに描けるが、良心も痛む。不謹慎な気もする。 「うーん、裸にされた人質・・・全裸にされた人質・・・恐怖のサイコロゲーム・・・コスプレゲーム・・・」 悪魔の囁きに負けて、タイトルを考えるゆり。良心と格闘しながらも、Mの感性が筆を走らせる。 憎き男の手に落ち、美しきヒロインが無念にも陵辱されてしまうシチュエーションは、SにもMにも、最高の興奮をプレゼントできるのだ。 素っ裸にされ、両手両足を大の字に拘束されて、無抵抗の状態で、心から軽蔑している大嫌いな男が、見下ろす。痛い目に遭うのも嫌だが、全身性感マッサージで責められて、感じちゃいけないのに感じちゃう。女にとってこれほど悔しいことはない。 ましてやイカされたら、それはもう立ち直れない。 「・・・・・・」 ゆりは、唇を噛み、川平と、代野の顔を浮かべた。実際に彼女が体験したことだ。でも、立ち直っている。間違いなく死ぬほど悔しいことだけど、Mにとって、その危機一髪は、最高にエキサイティングでスリリングなシチュエーションなのだ。 アブノーマルだからこそ味わえる官能ロマン。屈辱を快感に変えてしまうのも、一種の防衛本能か。理性があるうちは必死に抵抗するが、理性が飛ぶほど気持ちいい目に遭わされてしまったら、もう潔く敗北を認めて、敵に屈してしまう。 敵に観念してしまったヒロインは、かわいくて、美しい。 そういうヒロイン敗北シーンを、Sやヒロピンファンが好きなことも、ゆりは熟知していた。やはり自分にとって官能小説は天職だと思い、ゆりはペンを走らせた。 END 前へ |
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