《MUMEI》 重なる手〜麗羅視点〜 歩の前まで 小走りで走っていき 歩の制服の裾をつかむ。 私の心臓は、ドキドキと脈打っていた。 歩の目を見ると 照れて言葉が 出なくなりそうだったので 少し俯き加減で そっと呟いた。 『・・・ありがとう。』 お礼を言うのは いつぶりだろう・・・。 言った後に 唇を噛みしめる。 お礼を言うのは なんだか顔を 猫じゃらしで くすぐられているみたい。 俯いて何も言わなくなった私を 心配してか 歩が私の顔を覗き込む。 照れた私の顔を見て 歩は、満面の笑みを浮かべた。 歩の笑顔を見ると 安心する・・・。 『私、歩が聞いてくれなかったら 過去の話、誰にも 出来ないままだった。 ・・・ありがとう。』 またまた私は、照れる。 歩は、何も言わずに 私の頭をポンポンと叩いた。 何となく、お父さんに 褒められた時を 思いだした。 こんな大きな手で よく私の頭を撫でてくれてたな・・・。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |