《MUMEI》
透明少女と明るい少女
私には友人と言えるべき者は居ない。

だが、友人らしき者ならば居る。

私とは対照的な明るい子。

日向みたいに明るく穏やかな子。

私みたいに暗くて静かすぎる奴とは

全く別だ。

私は校則も規則も破らないでいるが

自分を優等生だと思わない。

彼女も校則と規則は破っていない。

だが、私より強くて成績も良い。

そう考えれば、そちらが優等生だ。

私は、良く言えば普通だが少し悪い。

悪く言えば、普通以下で駄目な奴。

なのに…あの子は私に笑顔を見せる。

なのに偽善者なんかじゃない。

実に不思議な子だと思った。

どうして私に笑顔を見せてくれるのか…

全く理解出来なかった。

何故、私みたいなのが生きていて

何故、楽しそうなの?

ずっと疑問だ。

聞いても、一緒に居て楽しいから。

それしか返って来ない。

私が生きる気力を失いかけた時、

あの子は私に、こう言った。

まだ、私は何もしてあげていない。

だから、恩返しできるまで待って…

涙ながらで私なんかに、そう言った。

…逆だよ。

何かしてもらってばかりだよ。

私がそう言うと、

私は、自分で確信できてない。

私の中で恩返しできてないの。

そう言う。

何故なのだろうか。

私はあなたに恩返しされる程

何かした覚えがない。

そんな時に、

偽善者と言う言葉が…

脳裏によぎる。

私は最低だ。

偽善者なんかじゃない。

それは分かっている。

なのに私に手をさしのべた人が

本当に善人としてなのかが分からない。

信じられなかった。

そんな最低な私に彼女はこう言った。

まだ、一緒に居たい。

理由なんて分からない。

だけど一緒に居たいの。

穏やかな口調でそう言った。

この子は私の友人なのだろうか。

他人なのだろうか。

それとも私の中の架空の人なのだろうか。

分からない。

数分して私は確信した。

この子だけは信じられる。

そう強く思った。

友人だと言い切れない私は…

最低なんだと思った。

こんな私でも大丈夫なら…

本当は、まだ傍に居たい。

私は彼女に告げた。

そうすると彼女は泣き崩れてしまった。

大丈夫?

大丈夫。これは嬉し涙だよ。

…そっか。なんかごめんね…

ううん。大丈夫。

…友人になってくれる、かな…?

なに言ってんの?

…え?

もう、友人とか通り越して親友でしょ?
少なくとも私はそう思うよ?

彼女はそう言って、

いつもの日向のような笑顔を見せてくれた。

そして私も少し笑顔を見せてみた。

これが友人…いや、親友と

呼べる人との関わり方なんだと思う。

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