貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
差。
「ここが洗面所。…ドアを挟んでこっちがトイレ、こっちが風呂」

「うんうん」


アキの家にお邪魔して、荷物を置く間も惜しんで中の案内をしてもらう。

どこを見ても、完璧なほどにピカピカで、あまり生活感を感じない。


「掃除は2週間に一度、専門の業者に来てもらってんの」

わたしの心を見透かす様に、アキが云う。


「こう見えて、結構キレイ好きだからさ、あたし。自分でも色々やるんだよ?」

「へぇ…」



アキって、中性的で日本人離れした容姿なのに、なんか無頓着と云うか、ガサツ…と云うか、喋り口調と振る舞いが原因なんだろうけど、勝手にそんなイメージが出来上がってた。

そっか、キレイ好きなんだ。



「だから掃除と洗濯はあたしにまかしといてよ!」




わたしは、今まで親元でぬくぬくと過ごしてた…。
掃除も洗濯も、家事をするヒマがあるなら勉強しろって感じで、ほとんど何もしたことが無い。

唯一、母が料理を教えてくれた。

夏休みや冬休み、夕食前に息抜きとして、台所に立たせてくれた。

どんなに一生懸命作っても、父はニコリともせずに食べた。

「おいしい」の一言も無く。




だからわたしは、アキに料理番の立候補をした。


きっと、アキは「おいしい」を云ってくれる。



そして、これ以上アキとの差を広げられたくなかったから。



負けず嫌いなんだ、わたし。

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