《MUMEI》 潜入二人は二階にある渡り廊下で隣の校舎へと移動した。 ここはほとんどが普通の教室らしく、ユキナの罠も仕掛けられていない。 「早めに通り抜けた方がいいな、ここ」 ユウゴが言うと、前を行くユキナが立ち止まった。 「どうした?」 「……通り抜け、できないみたい」 小さな声で答えるユキナの前の教室から、複数の黒い服を着た警備隊たちが現れた。 どうやら教室を一つ、一つ確認しているらしい。 「引き返すぞ」 そう言いながらユウゴが渡り廊下の方へ行こうと体の向きを変えた時、「おい!」と声をかけられた。 二人は思わず身構える。 しかし、攻撃してくる気配がない。 「そこのお前らだ。あっちの校舎はどうだ?」 ユウゴはゆっくり彼らの方を見た。 どうやらユウゴたちだと気付いていないらしい。 「服、借りといて正解でしょ?」 「だな」 小声で二人はひそかに笑い合う。 「おい!」 「あ、ああ。二階までにはいなかった。美術室にえらい仕掛けがあって、かなりの人数やられた」 ユウゴは多少声色を変えて言った。 「そうか。向こうも、何か仕掛けられてたらしいな」 そう言って、その警備隊は燃え上がる家庭科室を見た。 「……あのガキども、悪あがきを。とにかく、あと少しで応援が到着する。それまでに奴らを見つけるぞ。おまえらも俺たちに加われ」 「ああ。わかった」 ユウゴが頷くすぐ横で、少し俯いたユキナが「あいつら、まだ来るわけ?」と悲観的な声を小さくあげた。 「とにかく、今がチャンスだ。できるだけ奴らの数、減らすぞ」 ユウゴはユキナの肩をポンと叩くと、警備隊たちの方へ近づいて行った。 「チャンス、ね。……だといいけど」 ユキナは一人呟き、同じように歩き出した。 前へ |次へ |
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