《MUMEI》 12千香が服を着ると、ほぼ同時に、瑠璃子が連れて来られた。 「瑠璃子!」 「千香さん・・・」 二人は抱き合った。そして千香は瑠璃子の両腕をつかみ、心配顔で聞いた。 「瑠璃子、酷いことはされてない?」 「されてない。紳士的な扱いを受けたわ」 「そう」 「千香さんは?」 「あたしは大丈夫」 千香は、瑠璃子の肩を抱くと、切川琢磨を見た。 「帰っていいですか?」 「捜査は打ち切るんだよね?」 「ええ」 「じゃあ、いいよ」 千香と瑠璃子は軽く頭を下げた。 「失礼します」 「武人の情けだよ。普通は許さないよ」 行きかけた二人は立ち止まり、振り向いた。また無視したとか言って監禁されたら困るので、じっと切川の話を聞く。 「素直に謝ったから許してあげたんだよ。それなのにまた嗅ぎ回ったりしたらねえ。泣かすよ」 「・・・失礼します」 二人は頭を下げると、倉庫を出た。無事にここを離れるまでは油断禁物だ。千香と瑠璃子は無言のまま倉庫から離れた。 もしも服に盗聴器がつけられていたら大変だ。二人は目配せすると、それを見越して会話した。 「瑠璃子。本当に大丈夫だったの?」 「あの二人はSだけど、お願いしたら許してくれたから、そんな悪い人じゃないわ」 「そうね。本当に邪悪な連中なら、あたしたち二人無事では返さないでしょう」 「情け容赦なく回されていたと思う」瑠璃子がおなかに手を当てた。 「こっちも、タレコミ一つで彼らを疑って、つきまとったという落ち度があるから、これで手を引きましょう」 「ええ」 二人は千香のマンションに行くと、すぐに服を脱ぎ、下着姿になって自分のシャツやジーパンやスカートを調べた。 (あった!) やはり盗聴器がつけられていた。千香のシャツにも、瑠璃子のスカートにも、小型の盗聴器がつけてあった。二人はそれを外すと、深呼吸をした。 「侮れないわね」 「千香さん、どうするの?」 「もちろん引き下がらないわ」千香の目が光る。「これに味をしめて、また女性を監禁するでしょう。もっと大胆な犯行になるかもしれない」 「ええ」 「あたしたちが引いたら、犠牲者が続出する。犠牲になる女性が一人も出ないうちに手を打たないと」 瑠璃子も燃える瞳で聞いた。 「で、どうするの?」 「慎重に行きましょう。今度捕まったら二人ともただでは済まないわ」 「・・・そうね」瑠璃子は緊張の面持ちになる。「でも、辱められた恨みは晴らしたい」 「何されたの?」 「素っ裸にされて、手足縛られて、強烈な媚薬でイカされた」 千香は顔をしかめた。何て酷いことをするのか。 「あたしも、全裸にされて手足縛られて、卑怯にもナイフで股を叩くから、降参するしかなかった」 「それあたしもやられた。ド変態だよあいつ。あの切川って男。あと、所長の田辺も」 「会ったの?」 「田辺は目が完全にイッてた。クレージーな科学者は何するかわからないから怖いよ」 千香は服を着る。瑠璃子は下着姿のままだ。 「怪しい研究は?」 「そこまでは見つけられなかったわ」 とにかく、このまま捜査を打ち切る気はなかった。千香は作戦を練り直した。 前へ |次へ |
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