《MUMEI》
7
二人は病院で検査を受けたが、幸い異状なしだった。千香は犬に股を直接ベロベロ舐められたので、菌が入っていたら困ると思ったが、大丈夫だった。

瑠璃子はかわいそうに犯されてしまったが、サボテンコンドームをつけたままなので妊娠の心配はなかった。しかしサボテンのトゲトゲでメロメロにされてしまった。彼女は思い出すと赤面してしまう。でも、切川琢磨は命の恩人でもあるから、悔しさは自然に薄らいだ。

瑠璃子の小悪魔戦法がはまり、切川をその気にさせたが、助けてくれたことは心底感謝していた。瑠璃子だけでなく千香も、切川の情状酌量を訴えた。

田辺幹一を始め、子分の罪は重い。逮捕監禁。強制わいせつ。それに腹パンチなど暴力もふるっているし、脅したから脅迫も入る。

特に所長で主犯の田辺は重罪だ。刑事たちも、研究室に突入し、犯人たちを一網打尽にしたが、触手を見上げて呆然と立ち尽くした。

「・・・・・・何だこれは?」

イカれたマッドサイエンティスト。千香は想像した。今回、切川琢磨が助けてくれたことは奇跡のようなもので、本来はとことん陵辱の限りを尽くされてしまったかもしれない。

真っ裸にされて、手足を縛られ、無抵抗の状態で官能的な拷問。これはきつい。悔しいけどどうにもならなかった。警察官の誇りに懸けても屈服してはいけないと思ったが、肉体は正直に反応してしまう。

でも、まだ良かったのだ。卑猥な目に遭わされるのは確かに恥辱だが、痛い目に遭わされるのは、もっと困る。電気拷問でもされたら、泣きながら謝るしかない。

世の中には、田辺よりも、はるかに危険な人間がいる。素っ裸にされて手足を拘束されたら、何をされても抵抗できない。もしも、もしも、電気ノコギリで切り刻まれる女を見て喜ぶような、完璧にイカれた人間に捕まったら・・・。

千香は身震いして自分の両肩を抱いた。女は人一倍気をつけなければいけない。大切な体だ。自分の身は、自分で守るしかない。そして刑事だ。自分の体も、善良な市民の体も、悪魔の生贄にしてはいけないのだ。

明日、退院できると看護師に言われた。千香は、ベッドで横になると、呟いた。

「ああ、変な夢を見そう」

夢の中で触手に遭わないことを念じながら、千香は澄んだ瞳を静かに閉じた。



END

前へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫