《MUMEI》 「それにしてもこのヘルメットは何なんだ?」 「ドクター・ナカマツの発明だよ....お、噂をすれば影というやつだ」 人影の向こうからアハハと笑いながら走り寄って来たのは小柄な、まだ少年であった。 それを見る修海の瞳の奥で、苦手とする生き物に遭遇した時の人間特有の、怯み (ひるみ)の色が浮かんだ。 「修海さん!ダイスケさん!わざわざ 現場までお越しいただけるとは!」 ハアハアと息を切らしながら二人に追いすがって来る顔は無邪気な喜びにあふれ、瞳はキラキラと輝いている。 「どうです僕の考案したこの、対サイコウェポン用に開発したヘルメットは?! 防ぐのは敵の思念波攻撃だけじゃ、ありませんよ!このように....」 少年の手がズボンの尻ポケットの方へ回ると、次の瞬間銀色に輝くリヴォルバーを握って現れた。 二人の男が止める間も無く、銃口が右のこめかみ辺りに押し当てられると、轟音と炎が弾けた。 「初速400メートルで発射された357 マグナム弾を至近距離で受けても、傷 ひとつつきません!」 あんぐりと口を開けたまま固まっている長身の男....修海の前で、少年は あくまでもマイペースだった。 衝撃で左に傾いた頭を真っ直ぐ立て直すと、ヘルメットの弾丸が弾けた 部分を二人の方に向け同意を求めるように示す。 「ね?どうです?ここですよ、ここ! 傷ひとつ無いでしょ? え....何か?」 修海の青ざめた顔にみるみる血の赤みがさした。 人指し指がぶるぶる震えながら上がると、ドクター・ナカマツの額をロックオンして停止した。 「二度とやるな....私はそういう 冗談は一番嫌いなのだ!」 ドクター・ナカマツは修海を真っ直ぐ見上げながら、ぽかんとしている。 「いや別に冗談では無く....真面目な実験結果なのですが?」 「.......」 「...?...?」 「不愉快だ」 修海は相棒と少年に背中を向けると、 独りで先に歩きだした。 先の明るさはどこへやら、深甚なるショックを受けたように少年の顔が一気に青ざめていく。 「あの....ダイスケさん、僕....何かまずい事しましたかね?!」 前へ |次へ |
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