《MUMEI》
出発前 【ポケモン】
 2週間前。異動通知を受けたクラークは、自宅でせっせと支度をしていた。スーツケースには入れる物が
多く、もう小物しか入らない程だ。

「これは宅配で……ああバシャーモ。それは廊下の段ボールに詰めてくれないか」

 大量の分厚い本を抱えて階段を降りてきたバシャーモは、クラークに言われた通り、段ボールに詰めた。
縦や横にして、隙間ができないように詰めていく。そうして3分も経たない内に、1つの段ボールが出来上
がった。まだ数冊本が残り、次の段ボールを組み立てて入れていく。

「さて、後は……」

 と言ってクラークが腰を伸ばした瞬間、廊下の方から大きな音と鳴き声が聞こえてきた。ミミロップだ。
応接間の掃除が終わり、こちらに戻ってきたのだろう。

「まったく……どうしたんだ?」

 ほら、と言って手を出し、ミミロップを起こす。どうやらバシャーモが持ってきた本に躓いたらしい。そ
の事に気付いたバシャーモも、手を合わせて謝っている。外で運び出しを手伝っていたゴロンダやボスゴド
ラも騒ぎを聞きつけ、“何事か”とでも言わんばかりにすっ飛んできた。

「まあ、そうだな。そろそろ休憩するか」

 とクラークは言い、胸ポケットから煙草とライターを取り出した。煙草を口にくわえ、ライターの火が消
えぬよう手で囲って火を点ける。ライターから煙草を離すと、煙がクラークの周りをたゆたった。
 溜め息と共に煙を吐く。ワイシャツにジーンズというラフな格好だが、彼が煙草を吸う姿はとても絵にな
った。

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