《MUMEI》
ようやくハリーの杖が確定。
オリバンダー老人の口調が急に厳しくなって、賢がびくりと身を強ばらせた。

「いや……あの、折られました。はい。……でも、まだ折れた杖を持ってます」
「じゃがまさか使ってはおるまいの?」

老人がピシャリと言う。

「とんでもない」

ハグリッドが言った。

「ふーむ……さて、それではポッターさん。拝見しましょうか」

老人は、銀色の目盛りの入った巻尺を取り出した。

「どちらが杖腕ですかな?」
「あ、あの、僕、右利きです」
「腕を伸ばして。そうそう」

ハリーの体の寸法を採りながら、老人は話を続ける。

「オリバンダーの杖は、1本1本強力な魔力を持ったものを芯に使っております。一角獣のたてがみ、不死鳥の尾の羽根、ドラゴンの心臓の琴線」

意外とファンタジー物が好きらしい充が、きらっと目を輝かせた。

「一角獣も、ドラゴンも、不死鳥も皆それぞれに違うのじゃから、オリバンダーの杖には一つとして同じ杖はない。もちろん、他の魔法使いの杖を使っても決して自分の杖ほどの力は出せない訳じゃ」

老人は棚の間を飛び回り、箱を取り出していた。

「もうよい。ではポッターさん、これをお試し下さい。ぶなの木にドラゴンの琴線。23cm、良質でしなりが良い」

ハリーが杖を振る。老人はすぐに杖をもぎとってしまった。

「楓に不死鳥の尾羽根。18cm、振り応えがある」

駄目らしい。

「黒檀と一角獣のたてがみ、22cm、バネのよう」

駄目だ。
ハリーは次々試すが、どれも合わないらしい。

「難しい客じゃの。え?心配なさるな。必ずピッタリ合うのをお探ししますでな。……さて、次はどうするかな……おお、そうじゃ……滅多にない組み合わせじゃが、柊と不死鳥の尾羽根。28cm。良質でしなやか」

ハリーは杖を手に取り、頭の上から店内の空気を切り裂くように振り下ろした。
すると、杖の先から赤と金の火花が散り、光の玉が壁に反射した。
ハグリッドは「オーッ」と手を叩き、老人は「ブラボー!」と叫んだ。
ハリーは、この杖に “選ばれた” のだ。

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