《MUMEI》
皆の杖が確定。
「素晴らしい。いや、良かった。さて、さて、さて……不思議なこともあるものよ……全く以て不思議な……」

オリバンダー老人は、ハリーの杖を箱に戻し茶色の紙で包みながらまだブツブツと繰り返していた。

「あの……何がそんなに不思議なんですか?」

ハリーが聞く。

「ポッターさん、わしは自分の売った杖は全て記憶しておる。全部じゃ。あなたの杖に入っている不死鳥の尾羽根は、同じ不死鳥がもう一枚だけ尾羽根を提供した…たった一枚だけじゃが」

同じ不死鳥、か。

「あなたがこの杖を持つ運命にあったとは、不思議なことじゃ。兄弟羽が……なんと、兄弟杖がその傷を負わせたというのに……」

ハリーが、息を飲んだ。

「さよう、34cmのイチイの木じゃった。こういうことが起こるとは、不思議なものじゃ。杖は持ち主の魔法使いを選ぶ。そういうことじゃ……」

何かに気づいたような表情になる賢。

「ポッターさん、あなたはきっと偉大なことをなさるに違いない。[名前を言ってはいけないあの人]も、ある意味では偉大なことをしたわけじゃ。恐ろしいことじゃったが、偉大には違いない」

ハリーの顔色が少し悪くなった気がする。

「さあ、次はあなた方じゃ」

俺達の杖は、あっさり決まった。

東さんは桐にドラゴンの鱗。

充は松に一角獣のたてがみ。

俺は梅にヒッポグリフの羽根。

本部長は牡丹に一角獣の尾。

遊真くんは樫にドラゴンの心臓の琴線。

千佳ちゃんは椎に不死鳥の尾羽根。

沢村さんは南天にドラゴンの心臓の琴線。

三雲くんは楓に一角獣のたてがみ。

三輪は椿に金鵄の羽根。

……賢だけ、かなり時間がかかっている。

「椎にドラゴンの鱗」

杖の箱が落ちてくる。

「黒檀にドラゴンの心臓の琴線」

窓が割れる。

「柊に一角獣のたてがみ」

ハグリッドの頭に火がつく。

「楓に一角獣の尾」

杖が賢の手から離れて飛んでいく。

「ふーむ……これは難しい……ポッターさん以上ですな……」

そう言ったオリバンダー老人が持ってきた杖は、美しい銀色に輝いていた。

「……これは…………?」
「桜の木に、幻獣のたてがみ。36cmじゃ」
「幻獣?」
「そうじゃ。わしがその幻獣と出会ったのはもう大分昔になるが、わしが東洋の国を旅していた時に美しい泉の傍で出会ったんじゃ。その幻獣は、わしに一本だけたてがみをくれた。それは美しい幻獣じゃった」

……おいそれ麒麟じゃないのか!?
とりあえず、賢が杖を振る。

「おお……」

柔らかな淡い桃色の光が俺達を包んだ。
ふわりと甘い香りがする。桜の香りだ。

「凄い……」

杖を持ったまま、賢が呟いた。
賢の杖が、ようやく決まったのだった。

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