《MUMEI》
五月の晴れた日
今日は晴天。

青く澄んだ空は、海のように

広く深いように思えた。

あの人も、この空を

見ているかもしれないと

考えると、なんだか不思議だ。

だけれど、少し嬉しく思う。

そして、昨日の手紙の事を

ふと思い出す。結局……

あの手紙は水の入っていない

金魚鉢の中に入れた。

昔、空色の綺麗な魚を

飼っていた水槽。

雲一つ無い、この朝の空に

とっても似た色の魚……

確か、あの人も鑑賞魚が好きだったな……

今では全くという程に会えないわけで

仕方ないとしか言えないけど……

また、魚の話がしたいな。

だけど、忙しいだろうから……

無理は言わない。少し寂しいけど……

一生に会えないわけじゃないから

気長に待つしかないよね。

そうと思っておかなければ

寂しさに潰れてしまいそうになる。

辛いだとか、会いたいだとか。

そういうのは心で思うだけ。

実際、そんな事を言ってしまえば

本当に困らせるだけなのは……

馬鹿でなくとも目に見えている。

まぁ、本当は自分の思い込みなのかと

思いたいところだ。

だが……

そうならば、自分と付き合っている

時点から怪しくなり始める。

思い込み始めたら、きりがない。

そんな事を思っていると

強い風が吹いた。

そろそろ部屋の中に居よう。

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