《MUMEI》
あの日の世界
「覚えている……よな。」

そこに居たのは、一人の少年。

見覚えのある赤髪と紅い瞳。

__________紅だ。

「やっと、時は満ちたんだね……」

青髪に蒼い瞳。……蒼?

「まぁ、そんなところか……

九年経ったのだからな。」

妖しげな笑みを浮かべる二人の

後ろには、あの二つの建物。

……同じ夢の世界?

「紅と……蒼だよね!?

何故……?」

そんな時、眠る前の事をふと

思い出す。

十四歳の誕生日。

それは……まさしく今日だ。

「ただ、覚めない夢。

それだけは伝えておく。」

「そ、それって……」

背筋が凍り付いたと思うほどの

寒気がした。

その瞬間、視界が暗転する。

「っ……!?」

目を開けると知らない部屋。

「さて……

何から話すべきか。」

広い畳の部屋に二人、座布団の

上に座っていた。

紅は獲物に逃げられないよう

監視するような目で私を見ていた。

煌めく紅い瞳の奥には

暗い闇があるように感じる。

「まぁ、桜花は目覚められない。

ここに居れば、死ねない。

別に文句はないだろう?」

へらりと笑う。

「どういう、事……?」

「どうもこうも、桜花は……

選ばれたのだから仕方ない。」

「そうは言われても……!!」

「どうやっても目覚められない。

現実を受け止めて早く諦めろ。」

「……」

黙るしかなかった。

今の現状で私は何も出来ない。

「……ねぇ、ここは

私の夢なの?」

「そうであって、そうではない。

この世界の支配者は消えたからな。

夢物語の主は桜花。

だが、自由にいられはしない。

とある事をすれば少しだけ

自由にさせられるけどな。」

「へ、へぇ……」

「……とりあえず、解ったな?」

「……う、うん。」

「なら、次は蒼の所に行ってきな。」

「えっ?」

また、視界が暗転した。

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