《MUMEI》
マッサージチェア 1
夏の始め。海の家は海水浴客で賑わっていた。

小田彩(おだ・さやか)二十歳。彼女は正真正銘の警察官だ。警察官になって早一年。きょうは仕事が休みで、友達と海で遊ぶ約束をしていたが、友達が急に来れなくなり、彩は海で待ち合わせしたことを後悔した。

白のビキニは男をドキッとさせる。155センチと小柄なほうだが、スリムでセクシーな美ボディは、男たちの視線を嫌でも集める。

肩に少し触れる程度の短めな黒髪がよく似合う。目は仕事柄シャープだが、唇はたまらなく愛らしい。

彩は思った。一人で海をウロウロして、変な男にナンパでもされたら困るので、帰ろうと。しかし、海の家に並べてあるマッサージチェアに目が行った。

彼女はそれほど海にしょっちゅう来るほうではないが、海の家でマッサージチェアというのは珍しいのではないかと思った。すると、店員だろうか、眼鏡をかけた年齢不詳な男性と目が合った。

「そこの美しいお嬢さん」

「え?」彩は後ろを振り向いた。誰もいない。「あたし?」

「どうです、マッサージチェアで身も心も癒しませんか?」

彩はキュートなスマイルを向けると、かわいく両手を振った。

「いえいえ、結構です」

「そんなこと言わずに、無料サービスなんですから」

「無料なんですか?」彩は驚いてマッサージチェアを見た。

男はやや長めの髪をかき分け、笑った。危ない笑顔にも見えるが、人を外見で判断してはいけない。彩は笑顔で応対した。

「どうしようかな」

「どうぞ、すわってみてください。メチャクチャ気持ちいいですよ。そこら辺のマッサージチェアとは訳が違いますから」

好奇心も手伝って、彩は言った。

「じゃあ、ちょこっとだけ」

「そう来なくっちゃ」

彩はビーチサンダルを脱ぐと、手荷物を近くに置き、マッサージチェアにすわった。男がリモコンを操作する。マッサージが始まった。

「んんん・・・」

彼女もマッサージは嫌いではない。両脚と肩をやわらかく揉まれ、うっとりした表情になる。

「どうですか?」

「凄く気持ちいいです」

「そうでしょう、そうでしょう」

しかし、いきなり機械は激しく動き、彩の両腕を頭のほうへクロスする形で持っていった。

「え?」

両腕両脚を揉まれているから、ある意味、手足の自由を奪われ、無抵抗の状態だ。さらに背もたれが倒れ、仰向けに寝るような体勢になった。

若くて、とびきりにかわいい女の子がセクシーな白の水着姿でマッサージを受けているのだ。いつの間にか男の海水浴客が集まって来て、彩を見ている。これは恥ずかしい。

(何見てんのよ)

彼女は店員を探したが、いない。さすがに焦った。

(あれ、どこ行った?)

マッサージチェアは全身を揉みほぐす。ビキニの上から股もマッサージする。彩は慌てた。

(ちょっと待って、嘘でしょ?)

股を揉みながら、電マのように強烈な刺激が来る。彩は本気で焦った。

(え、嘘、待って・・・これはちょっとおかしいでしょう?)

彩は一生懸命店員の姿を探したが、見当たらない。股に強烈な刺激を食らい、彼女は唇を強く結んで身じろぎした。

次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫