《MUMEI》
2
電マのような強い振動に、不覚にも感じて来てしまった彩は、両脚をしきりに動かし、必死に快感に耐えた。

(嘘、どうしよう)

このままでは耐えられない。男たちが見ているのだ。早く何とかしないといけない。彼女は意を決して、嫌らしい目で見ている男に話しかけた。

「あの、すいません」

「え、俺?」

「店の人を呼んでいただけますか。さっきここにいた人」

「わかった」

海パン姿の男は、どさくに紛れて彩のおなかをポンと叩いた。

「待ってな」

「ちょっと!」

「何?」

「何じゃないわよ、何さわってんの!」

彩はムッとした顔で男を睨んだ。すると男はいきなり凄む。

「何その生意気な態度は? そういうこと言うならねえ、水着取っちゃうよ」

男がブラジャーの紐を引っ張る。彩は急いで言った。

「わかった、待って、わかったから!」

「何がわかったの?」

「あの、お店の人を呼んで来てください」

「何がわかったか聞いてるんだよ」とまたおなかをさわる。

両腕両脚を揉まれて無抵抗の状態なのだ。ヘタに逆らって水着を取られたら絶対に困る。大勢の人の前で全裸にされたら赤っ恥だ。

「生意気な態度を取ったことは謝ります。ごめんなさい」

「かわいい!」

「あの、店の人を・・・」

「わかった、わかった。待ってな」

股への振動は止まらない。快感が押し寄せて来る。彩は顔を紅潮させて店の者が来るのを待った。

(早くして)

電マのような振動はそのままに、今度は円を描くように股を責める。これはきつい。彩はたまらず腰をくねらせた。

(あ、ヤダ・・・)

男たちは十人くらいいて、彩を見ている。彼女は困り果てた。昇天寸前に追い込まれて、絶体絶命だ。まさかこんなところで乙女の大ピンチに遭遇するとは思わなかった。

(早く来て!)

海の家の中とはいえ野外に等しい。ここで昇天するわけには絶対にいかない。しかし限界だ。彼女はどうしていいかわからなかった。

(ヤダ、ヤダヤダヤダ・・・どうしよう?)

唇を噛んで無表情の彩。感じていることを悟られたくないから、ポーカーフェイスを保ち、体もあまり動かせない。

(んんん・・・んんん)

もちろん声も出せない。自然に足が動く。でも腰を激しく動かしたらバレてしまうので我慢するしかない。

(何やってんの、早くして!)

ようやく先ほどの眼鏡の男が戻って来た。

「どうです?」

「止めてください」

「止める?」男は驚きの表情で聞いた。「なぜ?」

「いいから早く止めてください!」彩は怒鳴った。

「あらら、何かなその態度は、お嬢ちゃん」

彩は怒りの目で男を睨むと、言った。

「あたし警察官ですよ。大問題にしたいんですか?」

「警察?」

男は顔をしかめた。仕方なさそうに機械を止めた。

「・・・ふう」

助かった。大勢の男たちが見ている目の前で昇天するという、女の子にとって最悪の事態は何とか避けられた。

手足が自由になると、彩はビーチサンダルを履いて起き上がり、男を怖い顔で睨んだ。

「どうしてすぐに止めなかったんですか?」

「止めたでしょう」

「すっとぼけてんじゃないわよ!」

突然大声で怒鳴るので、彩を見ていた男たちは、そそくさとこの場を去っていった。気安くおなかをさわった男も逮捕したかったが、今はこの男に集中しようと彩は決めた。

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