《MUMEI》
6
彩はマッサージチェアにすわった。緊張の面持ちで二人を見る。

「では、片瀬さんは操作してください」

「はい」

片瀬はリモコンを手にすると、機械を動かした。両腕、両脚、肩、背中、腰などを同時にやさしく揉む。正直気持ちいい。彩は両目を閉じて、マッサージの気持ち良さを堪能した。

「ん・・・」

股への強い刺激はない。操作の仕方でいくらでもコントロールできるのだろうか。普通のまじめなマッサージでしかない。彩は頭の中を急回転させた。

男の刑事が見張っているなか、悪さはできないか。彩は作戦変更を余儀なくされた。

「片瀬さん、止めてください」

片瀬はすぐに止めた。

彼女は隣のマッサージチェアにもすわり、四台全部調べたが、やはり普通の気持ちいいマッサージだった。

「倉庫にあると言ったわね?」

「はい、どうそこちらへ」

彩と小池は倉庫の中に案内された。ここにもマッサージチェアが三つある。

「これも調べますか?」片瀬が聞いた。

「調べるわ」

彩はマッサージチェアにすわる。片瀬が操作する。マッサージが始まった。

「刑事さんも、突っ立っていても疲れるでしょう。どうぞおすわりください」

「いや、いいです」

小池は彩を見守っていた。見守る気持ちに嘘偽りはないが、彼女のセクシーな水着姿を見れるのはラッキーだ。白のビキニはたまらない。思わずエキサイトしてしまう。

彩はマッサージを受けながら焦っていた。どれもこれも普通のマッサージだ。これでは証拠がない。

「もう一度、最初のマッサージチェアにすわるわ」

そこで先ほどと同じではなく、強い刺激もなく、普通のマッサージなら証拠隠滅だ。操作の仕方によってコントロールできるのだろう。

ところが、片瀬晴久は、最初のマッサージチェアに彩がすわることを拒んだ。

「刑事さん」と小池に言った。「このマッサージチェアも同じ型ですから。刺激が強過ぎるかどうか、ちゃんと見ていてください」

「はい」

再びあの強烈な振動で責められるのは気が進まないが、彩は証拠をつかむためには体を張るつもりでいた。

小池も、片瀬に言われるがままにマッサージチェアにすわり、彩を見守る。彩と小池は、二人ともマッサージチェアにすわり、向かい合う形になった。

「では、操作しますよ」

「お願いします」彩は片瀬に言った。

最初はやわらかいマッサージ。気持ちいい。両腕と両脚を揉みまくる。肩も背中も腰も、上手にマッサージしていく。そして、ついに股を水着の上から揉んだ。

「ん・・・」

口を真一文字にして快感に耐える。彩は片瀬を見た。包み隠さず、小細工せずに、股を刺激して来るとは誤算だった。

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