《MUMEI》
6
ドアが開く。小池は驚きの表情で彩を見た。

「さやかチャン」

彩は真顔になると、小声で話しかけた。

「脱水症状になったら困るから、少しでも飲んで」

ペットボトルのウーロン茶を小池の口もとに持っていく。小池は素直に飲んだ。

「さやかチャン。大丈夫なのか?」

「あたしは大丈夫。レイプはされてないし、トイレも行かせてくれたし、食事もご馳走になったわ」

「食事も?」

「小池君」彩は鋭い目で言った。「あたしに任せて。本当に邪悪な犯人だったら、あたしはとっくにレイプされてるわ。でもこうして開放してくれたわけだから」

小池は真剣な顔で聞いた。

「どうするつもりなんだ?」

「日本の警察は人質の命が最優先なんでしょ。それは自分たちが人質のときも同じでしょ。逮捕しないという約束なら、開放してくれるかもよ」

「日本の警察は犯人と交渉はしない」

「じゃあ、あたしが蹂躙されてもいいの?」

それを言われると辛い。二十歳の女の子なのだ。それに彩は刑事ではなく婦人警官だ。こんな事件に巻き込んではいけなかったのだ。

意地を張ったために、彩が酷い目に遭わされたら、責任は取れない。

「さやかチャン」

「何?」

「本当に変なことはされてないんだね?」

「ええ」

「わかった。君に従うよ」

「ありがとう」

彩は片瀬晴久が待つ倉庫に戻った。片瀬は余裕の笑顔で言った。

「僕を逮捕する計画は決まったかね?」

「何言ってるの。彼を説得してたのよ。で、納得してくれたわ」

「納得?」

「あたしをこのまま無傷で解放してくれたら、あなたを逮捕しません」

「ハッハッハ!」

片瀬は大笑いすると、膝を叩いた。彩は真顔で言葉を待った。

「マッサージチェアで君だけが気持ちいい思いをしただけだからねえ」

「え?」

「僕にも愛撫させてくれたら、二人とも無傷で開放しよう」

彩はおなかに手を当てると、言った。

「いいわ。ただし愛撫だけよ」

「大丈夫。犯したりしないから」

「手足は縛らないで」

「甘いよ。もちろん手足を縛るよ。大の字拘束の大股開きが基本でしょう、ハハハ」

犯される。彩はそう確信した。

「シャワーを浴びてもいい?」

「もちろん。浴びてきな」

彩はバスルームに入ると、シャワーを浴びた。

「どうしよう? どうすればいい」

ベッドに寝かされて、手足を縛られたら危険過ぎる。間違いなく犯す気だ。ならば一か八かの賭けをやるしかない。

彩は全裸のままバスルームから出ると、タオルで髪や体を拭く。胸も股も見えている。その大胆な行動に、片瀬は口を半開きにして、彼女の美しい体に見とれていた。

「かわいい・・・」

ぼんやりしている隙だらけの片瀬。彩はゆっくり近づくと、キュートなスマイルを惜しみなく向け、ベッドを見ながら聞いた。

「ここに寝ればいいの?」

「お、おう」

「手加減してね」

「手加減なんかしないよ」

彩はベッドに寝るふりをしたが、瞬時にタオルを片瀬の首に巻き、締め上げた。

「ごおおおおお!」

彼女も真剣だ。しくじったら電気拷問が待っている。

「やめろ・・・ぐるじ・・・しむ・・・」

彩は力を込めた。片瀬も必死に抵抗する。彩の髪をつかむと、抜群のバランスで背負い投げ!

「あああああ!」

裸の彩は床に叩きつけられた。背中と腰を打ってすぐには立てない。片瀬は背後から彼女の腕をつかんで捻ると、チキンウイングフェイスロック!

「んんん! んんん!」

彩は両足をバタバタさせてもがいた。顔と腕が決まって耐え難い激痛に襲われている。

「んんんんん! んんんんん!」

「降参か?」

「ん」

口にガキッと腕が決まっているから、頷くことも、喋ることもできない。彩は両足をかわいくバタバタさせてギブアップの意思表示をした。

「そのバタバタは降参ということか?」

「んんん」彩は両足を一生懸命バタバタさせた。

片瀬は技を緩めたが、すぐには外さない。

「さやか、ドジ踏んじゃったねえ」

「・・・お願いです。電気拷問だけは許してください。言う通りにしますから」

「かわいい」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫