《MUMEI》
2
まだ反抗する元気があるとは。この歯応えに、片瀬は燃えた。

「そういう生意気な態度を取るならねえ」

「生意気な態度なんか取ってません」

「こういう意地悪しちゃうよん」

片瀬は巨大なドリルマッサージ機を持って来た。そして彩が見ている目の前でスイッチを入れて見せた。先のトンガリがブルブルブルブルと激しくピストンする。

「さあ、M子かどうか調べてあげる」

「え?」

片瀬はドリルマッサージを彩のお尻に当てようとする。彼女は泣き顔で哀願した。

「わかったやめて、わかったから!」

「何がわかったの?」

「あたしはMです。認めます」

「僕、侮辱してないよねえ?」

「してません、してません、ごめんなさい」

「かわゆい!」

彩の慌てふためく姿に満足したのか、ドリルマッサージはスイッチを切ってベッドに置いた。しまわないということは、逆らえばドリルマッサージで責めるという脅しだ。

でも許してくれたのは正直に嬉しかった。本当に邪悪な男なら、どんなに懇願しても、面白がってやるだろう。

「さやか」

「はい」

「お尻を晒している状態って怖いだろう?」

「怖いです。でも、片瀬さんは心の優しい人だから、少しは安心ですけど」

「あれ、もしかしてプロファイリングってヤツ?」

「違います。そんなんじゃありません」

「じゃあ本音?」

「本音です」彩は振り向いて片瀬の目を真っすぐ見た。

「何で僕が心の優しい男だって知ってるの?」

「だって、普通ならあたしは、とっくに、その、酷い目に遭ってると思います」

「結構酷い目に遭ったじゃん」

確かに酷いことはされたが、取り返しのつかない拷問はされていない。

「でも、許してくれたから」

「誰が許すと言った?」

「え、まだあたしをいたぶるんですか?」

「嬲るよ。さやかの慌てふためく姿はたまらなくかわいいからね」

やはり変態だ。完全にイカれている。でも、この悪趣味のおかげでレイプは逃れていることも事実だ。ただ欲望に任せた犯人なら、とっくに犯されている。

「さあ、次は何して遊ぶ・・・あああ!」

小池が目の前にいた。怒りの表情で片瀬の顔面に右ストレート!

「がっ!」

片瀬が卒倒した。小池は彩を見る。全裸でうつ伏せの状態で両手両足を拘束されている。小池は思わず目を見張った。

「あああ、見ないで!」

「見てないよ」

小池にお尻を見られてしまった。恥ずかしい。彩は真っ赤だ。

「貴様、彼女に何をした!」

「待て、酷いことはしていない。彼女に聞けばわかる」

「うるさい」

小池は片瀬の襟首を掴んで強引に起こすと、思いきり右フックで顎を殴った。

「あああ!」

「小池君気をつけて。そいつは強いよ」

(そいつ?)

この言い方に片瀬晴久は燃えた。

「刑事さん。どうやってあのチェアから脱出できたのかな?」

「甘いぞ。警察はいろんな訓練を受けているんだ」

童顔に騙されて甘く見たか。片瀬は両手を出して言った。

「刑事さん、素直にお縄をちょうだいするから、もう殴るのはやめてくれ」

小池は顔をしかめると、手錠を出した。

「監禁及び、婦女暴行未遂の現行犯で逮捕する」

「何時何分って言わないの?」

「うるさい黙れ」

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